偽りの言葉 | ナノ


仁王視点


突然のなまえからの拒絶。

それは、自分の感情に気付かないフリをしていた俺に対する罰か。

本当は分かっていた。

俺は、ただなまえを手に入れたかっただけだ。

そして、勝手な独占欲からなまえを踏み躙った。

もう取り返しはつかないのだろうか。

退屈な授業の内容は耳に入らず、視線を逃した窓の外では、今日も厚い雲が空を覆っていた。



どうにも気乗りしない俺は空き教室でサボろうと廊下を歩いていた。

その時、目に飛び込んできたのは、屋上への階段を上っていこうとするなまえの姿だった。

俺は少し迷ってから、なまえを追った。

何か鈍い音がして、胸騒ぎとともに急いで階段を駆け上がると、屋上への扉の前でなまえが倒れていた。

「なまえっ!」

「……仁王。」

軽い身体を抱き起こすと、なまえは薄っすらと目を開けた。

「大丈夫か!?」

「うん。転んだだけ、だから。」

「はぁ……頼むから、驚かさんでくれ。」

ひとまずは無事みたいで安心したのも束の間、なまえの顔色が悪いことに気付いた。

「やっ…離して!」

「大人しくしんしゃい。」

俺は弱々しく身を捩るなまえを抱え上げ、そのまま保健室に向かった。



最初は嫌がっていたなまえだが、ベッドに横にならせると、そう時間の経たないうちに寝入ってしまった。

その寝顔を眺める。

苦しげに寄せられた眉。

何がなまえを苛むのか。

分からない俺には何も出来ない。

自分の無力さに失望し、立ち上がろうとするとシャツの袖を引かれた。

「……置いて、いかないで…」

消え入りそうな声に胸が締め付けられる。

なまえの閉じた目尻には涙が滲んでいた。

「なまえ。」

呼びかけても返事は無い。

溜まった涙が一筋、頬を伝って流れた。

「っ……」

事情とか理由とか、そんなものはどうだっていい。

大事なのは――

「大丈夫じゃよ。」

ベッドの傍に跪き、なまえの手を握る。

「俺が、ずっと…」



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -