偽りの言葉 | ナノ


仁王視点


新緑が眩しくなり、頭上には晴れ渡った空が広がっている。

俺は屋上の給水塔の影になっている場所に腰を下ろし、壁に背中を預けた。

傍らには、コンクリートの地面に身体を丸めて寝転んでいるみょうじがいる。

少し不自由そうな体勢をしているみょうじの目蓋は閉じられているが、眠ってはいないだろう。

おそらく俺の存在に気付いていると思うが、みょうじは微動だにしない。

俺も敢えて話しかけたりしない。

すぐ近くにいるというのに、時間や空間を共有している感覚は無い。

それは、みょうじが――



暫くすると、みょうじは徐に身体を起こした。

そして、億劫そうに立ち上がると、俺に近付いてきて隣に座った。

「暇。」

みょうじは何も映していないような瞳で、俺の方を見もせずに小さく呟いた。

「なら、俺と遊ばんか?」

「嫌だよ。」

「つれないのぅ。」

「今さらだね。」

淡々と交わされる会話は、いつも通り中身が無い。

「……………」

急に俺の肩に凭れてきたみょうじの心は読めない。

いや、心はここに無いのか。

頭を撫でると、みょうじは俺に預けていた身を引いた。

手が空しく宙を舞う。

「酷いのぅ。」

「知ってる。」

「自覚はあったんか。」

「一応は。」

「で、改める気は無いと。」

「……ん…」

今度は本当に眠いのか、みょうじは地面に投げ出してある俺の脚を枕にして横になった。

動かないみょうじの髪を緩く吹いた風が揺らした。



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