偽りの言葉 | ナノ

※もしかすると微裏に分類されそうな内容ですので、苦手な方はご注意下さい。

仁王視点


「仁王。」

床に仰向けに寝転がって雑誌を読んでいたら、なまえがいきなり腹の上に乗ってきた。

さっきまで潰れたクッションに座ってジュースを飲んでいたのだが。

「どうしたんじゃ?」

「今日、仁王の偽物みたいなの見た。」

「ククッ…偽物、か。」

読みかけの雑誌を床に置き、自分の腹に跨っているなまえを見上げる。

「仁王だと思って近付いて行ったけど、何か違った。」

「そうか。」

なまえはちゃんと俺を見てくれているのだという事に、薄らと口角が上がる。

服の隙間から手を差し入れて素肌に手を這わせれば、なまえは小さく身を捩る。

「何か…知ってる、の?」

脇腹で遊ばせていた手を移動させ、肉付きの薄い腰を撫でる。

気持ちが通じ合って以来、なまえは俺に触れられるのには酷く弱くて、切なげに息を吐く。

「ああ、あれは柳生じゃよ。」

「んっ……それ、誰?」

「お前さんが気にする必要なか。」

自分以外になまえの興味が向けられるのは面白くない。

なまえが目に映すのは俺の姿だけでいい。

なまえが呼ぶのは俺の名前だけでいい。

そして、なまえに触れていいのは俺だけだ。

心配になる程に軽い身体を床に押し倒して、その上に覆い被さる。

先程までとは逆に、フローリングの床に背中を預けたなまえが俺を見上げる。

床に縫い止めたなまえの腕を取り、手首に唇を押し当てて噛み付くように吸い付く。

それだけで小さく身体を震わせるなまえ。

柔らかい髪を梳き、淡く色付いた頬を撫で、耳を指先でくすぐる。

「仁王の手、好き。もっと触って。」

「フッ…可愛いのぅ、なまえ。」

気持ち良さそうに目を細めているなまえの首筋に手を滑らす。

少し力を込めれば折れてしまいそうな細い首。

無防備に晒されている白い喉に口付けて、軽く歯を立てる。

びくりと身体を揺らしたなまえの肩を宥めるように撫で、首筋に舌を這わせる。

「好いとうよ、なまえ。」

頬と同じ色に染まっている耳朶を唇で甘く食んで、吐息と共に囁く。

「私も、仁王が…んっ……仁王だけが、好き…っ」

吐息混じりの声に堪らなくなって、なまえの唇を自分のそれで塞ぎ、すぐに舌を差し込む。

それに応えて差し出されたなまえの舌を絡め取る。

舌を擦り合わせたり吸ったりしてやれば、なまえの唇からは甘やかな声が零れる。

大事にしたい筈なのに、歯止めが効かなくなる。

いくら求めても足りない。

貪るように深く口付け、吐息さえ奪い、なまえの透けるように白い肌を暴いていく。

触れるほどに熱を帯びて色付いていく滑らかな肌。

露わにした胸の膨らみに唇を寄せ、次々に赤い痕を散らしていく。

「っ、ぁ……に、お…っ」

俺のすること全てに反応するなまえが愛しくて仕方ない。

「好きじゃよ、本当に…なまえ、愛しとう…っ」

そのまま熱情に身を任せ、俺はなまえに溺れていった。


(2016.04.24)
 

※キスの意味
手首:欲望、喉:欲求、首筋:執着、耳:誘惑、唇:愛情、胸:所有


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