偽りの言葉 | ナノ


ヒロイン視点


「綺麗だということだけが価値じゃなか。少なくとも俺にとっては。」

私の手を取り、背中に手を回した仁王に上半身を起こされる。

「それに…お前さんは綺麗じゃよ。俺のために泣いてくれるんじゃから。」

「…っ、……あ、りがと…っ」

どこまで、私は仁王に許されるのだろう。

どうして、仁王はこんなに優しいのだろう。

「ホントに泣き虫じゃな。」

いつものように優しく抱き締めてくれる仁王の背中に自分の手を回した。

「仁王が……泣かせる、から…」

「それは光栄じゃ。」

「なに、がっ…」

「お前さんを泣かせるのも喜ばせるのも、俺だけの特権ってことじゃよ。」

「……解ら、ないよ…」

「俺だけを見てくれって言えば解るかの? 手に入れたからには、お前さんを誰にも渡したくなんじゃ。」

痛いくらいに抱き締められて、苦しいけれど、嬉しい。

「うん。どこにも、行かない。」

行けるはずがない。

私の居場所はここにしかないから。

「なまえ……好いとうよ。」

頬に添えられた仁王の手に上を向かされ、次の瞬間、唇に触れた温もり。

「久しぶり、だね。」

「我慢しとったからのぅ。……止まらんかも。」

何度も繰り返される口付けは次第に深くなり、私はゆっくりと冷たいコンクリートの上に押し倒される。

仁王の肩越しに見た空の青さが目に眩しかった。



私達は乱れた制服を整えることもなく、コンクリートの上に横になったまま抱き合っていた。

「大丈夫か?」

「うん。」

片手で私の首の後ろをなでながら、仁王が瞳を細めた。

「嬉しそう?」

「ああ。お前さんにあんなに求められたことは無かったからのぅ。やっと、本当にお前さんを手に入れられた気がする。」

「……私たち、なにやってるんだろうね。」

真昼の青空の下で、お互いを求め合って――

「好きなら、触れたくなるんは当然じゃろ?」

「そうじゃない時もしてたけどね。」

「…すまんかった。」

表情を歪めた仁王の頬に触れる。

「責めてないよ。綺麗じゃなくてもいいって、仁王は言ったよね?」

「ああ。」

「きっと、私たちはそれでいいんだよ。」

「…そうじゃな。」

頬に触れていた私の手に仁王の手が重ねられる。

伝わってくる温かさに、私はまた泣きそうになった。



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