あまいオトメゴコロ | ナノ


謙也視点


俺の手を掴んだなまえの頬は少し赤くなっとるけど、その横顔はどこか楽しそうや。

そんで、俺はなまえに手を引っ張られながら、めちゃくちゃ混乱しとった。

(いきなり『デート』とか言いよるし、手まで…)

アカン、全然分からん。

何でこないな事になっとるんや。

(しかも、『覚悟』って、何の覚悟やねん。)

心臓がうるさくて、さっぱり頭が働かん。

顔もめちゃくちゃ熱うなっとるし。

今までなまえとおって、こないな事なかったのに。

(…にしても、手ぇちっこいな。)

一生懸命んなって俺の手を握ってきよるなまえの手は、俺の手の平にすっぽり収まるくらいちっさい。

当たり前っちゅーか、今さらっちゅーか、なまえは女の子なんやなって思うた。

今までやって、それは分かっとった事のはずやのに。

改めて考えたら、心臓の音が一段と騒がしなった。

さっきから俺はおかしい。

(やって、こんなん……なまえんこと…)

意識しとるみたいや。

ちゅーか、完全に意識してもうてる。

「謙也先輩。」

「なっ、何や…っ?!」

「どこ行きます? 私は先輩と一緒ならどこでもいいですけど。」

俺を見上げたなまえは可愛え笑顔を向けてきよる。

何なんや、一体。

ホンマに何なん。

何でこないに可愛えんや、なまえは。

そこまで思うて、唐突に自分の気持ちに気付く。

なまえんこと可愛いとかなまえと一緒におると楽しいとか、ずっと思うてたのに。

何で自覚なかったんや、俺は。

どんだけ鈍いねん。

「謙也先輩? どうしたんですか?」

「いやっ、何もあらへんで…っ」

うわ、声裏返ってもうた。

かっこわる。

「もしかして……迷惑、でしたか?」

急にしょんぼりしたなまえが離そうとした手を、ぎゅっと握り返す。

「全然っ、迷惑ちゃうから。で、行き先な、まだ行ってないとこ連れてったる。」

ちょっと早口になりながら言うて、今度は俺がなまえの手を引っ張って歩き出した。

大人しく手を引かれるなまえにペースを合わせて隣を歩く。

お互いに口を開こうとしては止めて、無言になってまう。

ちらり、と繋いどる手を見る。

今はこれで十分な気もするけど、はっきりさせとくべきやとも思う。

これ以上考えたところで、俺の気持ちは変わらへんから。

せやったら、少しでも早いほうがエエはずや。

「なあ、なまえ。」

ちっこい手をもう一度、しっかりと握り直す。

「はっ、はい…?!」

ビクッて肩を揺らしたなまえを見つめて、一度息を吸う。

「俺、なまえん事が好きや。」

ぽかんって口開けたなまえは目をまんまるにして俺を見上げる。

そんなびっくりした顔も可愛え、なんて暢気な考えが過ぎる。

「それ…は、……どういう意味で、ですか?」

「どういうって、…それは言わんでも分かるやろ。」

聞き返されてもうて、無性に恥ずかしくなってくる。

いや、さっきからずっと顔は熱いままやけど。

「だって、謙也先輩…急に言うから。それに、私の勘違いかもれないし…」

足元に視線を落としたなまえは耳まで真っ赤にしとる。

っちゅーことは、俺の勘違いでもないらしい。

(自覚した途端にフラれるとか勘弁やし。)

「せやから、その……なまえがエエ言うてくれるなら、つ…付き合いたい、って思うとる。」

自分もなまえから目を反らして…けど、手は強く握って言う。

「…どうや? 返事、出来たら早く聞きたいんやけど。」

ちらっとなまえのほうを窺うけど、俯いとる所為で表情は分からんかった。

逸る気持ちを抑えてなまえの答えを待っとると、弱々しい力で俺の手を握り返してきた。

「私も……謙也先輩のこと…す、好きです。だから、その…よろしくお願いします。」

「っしゃ! ありがとうな、なまえ。」

「わ、私こそ、ありがとうございます…っ」

二人で赤い顔を見合わせて、それから笑い合った。

今、最高に幸せや。



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