50万打感謝企画 | ナノ


お昼休みになって、私は赤也と一緒に教室を出て屋上に向かった。

繋いでいる手と反対の手には、二人分のお弁当が入った水色のドット柄のランチバッグを持っている。

ギィーッと音を立てながら屋上へと続く金属製の重い扉を赤也が開けた。

途端に射し込んできた太陽の光が眩しくて、私は目を細めた。

「ここでいいか。」

「うん。」

二人で腰を下ろしたのは、花壇のそばにあるベンチだ。

手入れの行き届いた花壇にはいろんな花が綺麗に咲いている。

頭上の空はよく晴れていて、心地好い風が吹いている。

「気持ちいいね、あか…」

「今日のおかずは何かなー」

風に遊ばれた髪を耳にかけながら隣を見ると、赤也は勝手にランチバッグからお弁当箱を出していた。

(まあ、いいんだけどね。)

私は小さく苦笑いをこぼしてから、グリーンの楕円形のお弁当箱を膝に乗せた。

「おっ、今日のもウマそーじゃん。」

「ありがと。」

二段重ねの黒いお弁当箱のフタを開けた赤也がぱぁっと嬉しそうな顔をしたのを見て、私も嬉しい気持ちになる。

自分で言うのもなんだけれど、料理はけっこう出来るようになったと思う。

赤也の分もお弁当を作るようになって、少しでも喜んで欲しくて私なりに頑張っているのだ。

小さなことだけれど、好きな人を笑顔に出来るのは幸せなことだと思う。

「赤也…食べないの?」

なぜかお弁当に手を付けようとしない赤也に首を傾げる。

「いや、食うけど。たまにはさ、食べさせて欲しいなーって。」

「え…」

固まった私を、赤也がにこにこ笑って見る。

ものすごく期待されているのが分かる。

だけど、さすがにそれはちょっと…いや、かなり恥ずかしい。

屋上には私たち以外の生徒がたくさんいるのだから。

でも、私は赤也に…赤也の笑顔にすごく弱いから。

「……どれにする?」

「んー……やっぱ、から揚げだな。」

「ほんと、お肉好きだね。」

「いいから早く食わせろって。俺、めちゃくちゃ腹減ってんだよ。」

「わ、分かったから……ちょっと待ってて。」

タルタルソースのかかった鳥の唐揚げを箸で摘まみ、片手を添えながら赤也の口に近付ける。

すごく恥ずかしくて、少し手が震えている。

「えっと、……あ、あーん…」

「いただきまーす。」

パクリと唐揚げを食べた赤也がもぐもぐと口を動かしているのを、落ち着かない気持ちで見守る。

「どうかな?」

「すげーウマいぜ。」

口の端についたソースを舌で舐め取った赤也がにかっと笑う。

「良かった。」

ほっと息をついたのも束の間、赤也からの期待に満ちた視線をひしひしと感じる。

「……あのさ、赤也。まさか…全部食べさせて、って言ったりするの?」

「当たり前じゃん。あ、お前にはちゃんと俺が食べさせてやるから安心しろよ?」

「え、遠慮します…っ!」



どうにか赤也には諦めてもらって、あの後は普通にお弁当を食べた。

「はぁー、食った食った。ごちそーさま。」

「おそまつさまでした。」

満足そうにおなかをさすっている赤也の隣で、空になった二つのお弁当箱をランチバッグにしまう。

「今日は天気いいし、昼寝日和だよなー」

「うん、そうだね。……えっ、ちょっと、赤也。」

ランチバッグを脇に置いた途端、赤也はベンチに横になって私の膝に頭を乗せてきた。

「食べてすぐ横になると牛になっちゃうよ?」

「大丈夫だって。部活で死ぬほど動くからウシにもブタにもなんねーよ。」

「そういうことじゃないと思うけど…」

わざとらしく溜息をついてみるけれど、膝の上に感じる重みが嫌な訳がなくて、クセの強い赤也の髪を撫でる。

「なんか、すげー幸せ。」

「え?」

「飯がウマくて腹いっぱいだし、天気良くてあったかいし…お前がいるからな。」

髪を撫でていないほうの手を握られて、普段の赤也とは違う穏やかな笑顔を向けられる。

私も笑顔になって、自分よりも大きな温かい手をきゅっと握り返した。

「私も赤也と一緒にいられて、すごく幸せだよ。」



優しい恋
(2012.11.17)
 


 リクエストありがとうございます、豆電球さん。
 リクエストしていただいた『甘甘な日常』になっていますかね? 学校だと、二人でゆっくり過ごせるのは昼休みくらいかなと思いまして、一緒にお弁当を食べてのんびり過ごす話にしました。久しぶりに書く赤也に少し苦戦しましたが、年相応の男の子、という感じを目指しました。赤也が甘えてばかりな感じですが、甘い雰囲気にはなっているかなと思っております。
 ご希望に沿えていなければ書き直させていただきますので、遠慮なくおっしゃってください。


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