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同級生/ヒロイン視点


放課後、私は一緒に帰っていた友達と途中で別れて学校に戻ってきた。

今日が返却期限の本を返していなかったことを思い出したからだ。

机の中に入っているだろう本を取りに教室に向かった私は、ドアに手をかけようとして止まってしまった。

なぜか、同じクラスの白石くんが私の席に座っている。

その状況に動揺してしまう。

休み時間などに自分以外の席を借りたりするのはよくある事なのに。

白石くんは窓の外を眺めているようだけど、それなら窓際の席を借りたほうがいいんじゃないだろうか、と少し不思議に思う。

教室に入れないでいると、不意に白石くんがこちらを見て、ドアの透明なガラス越しに思いきり目が合ってしまった。

白石くんはすごく驚いた顔をして固まって、一方の私はさっきから固まったままだ。

だけど…

このまま廊下に立っているのはおかしいし、急に立ち去るのも不自然だと思う。

私は落ち着くように自分自身に言い聞かせ、ドアを開けて夕陽に赤く染められている教室に入った。

「みょうじさん……これは、その…」

白石くんは少し慌てたようにガタガタと音をさせながらイスから立ち上がる。

「あ、うん、気にしなくていいよ。私、本を取りに来ただけだから。」

そう返しながら、自分の席にぎこちなく歩いていく。

「そ、そうなんや。忘れ物なん?」

「うん。図書室の本を返すの忘れちゃってて。」

少ししゃがんで机の中を覗き込めば、やっぱり本が入っていて、それを手に取る。

「ごめんね、邪魔しちゃって。」

「いや、邪魔も何もみょうじさんの席やし。勝手に座ってすまんかったな。」

「いいよ、気にしないで。外の景色を見ながらボーッとしてたんでしょ?」

私は変に意識してしまっているけれど、白石くんにしてみれば特に意味はないだろう。

「夕焼け、綺麗だもんね。」

言いながら、私は内心の動揺を悟られないように窓の外の景色に目をやった。

「……ちゃうよ。」

静かな声が二人きりの教室に響いて、私は白石くんへと視線を戻した。

夕陽に照らされた白石くんの色素の薄い髪が赤い光を反射してキラキラしていて、やっぱり綺麗な人だなと思う。

「みょうじさんの席やから座ってたんや。」

「え…?」

「ベタやんな。好きな子の席に座っとったら本人に見られるとか。」

苦笑いで頭を掻く白石くんの言葉に、驚き過ぎて声が出ない。

だって、学校中の女の子の憧れの的と言っても過言じゃない白石くんが、何の取り柄もない私のことを好きだなんて。

とても信じられなくて、呆然と白石くんを見るしか出来ない。

「ごめんな、急に言われても困るよな。」

切なそうに眉根を寄せる白石くんはすごく綺麗で、そんな場合じゃないはずなのに見惚れてしまう。

「けど、俺、ほんまにみょうじさんのこと好きなんや。それだけは分かっといて欲しいねん。」

真剣な瞳と声に、どくんと心臓が大きく脈打つ。

「ごめんな、困らせてしもうて。」

「ま、待って…っ」

悲しげに笑って立ち去ろうとする白石くんの学ランの裾をとっさに掴む。

「あの、ね……私も…………私も好き。」

戸惑った顔をしている白石くんの目を見ながら、なんとか自分の想いを口にした。

「……ほんまに?」

驚いたように目を見開いている白石くんに、私は自分の顔が赤くなっているのを自覚しながらこくこくと頷く。

「ずっと、白石くんのことが好きだったの。」

「あかん、どないしよ。嬉し過ぎてどうしたらいいのか分からん。」

片手で口元を隠した白石くんは夕陽に負けないくらいに真っ赤な顔をしていた。

「すごい、顔真っ赤だよ。」

「自分なんか首まで赤いで。」

夕陽の色に染まった教室の中、白石くんと私はお互い真っ赤な顔を見合わせて笑った。



あなたと同じ気持ちです

(2012.08.25)

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