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恋人(後輩)/千石視点


今日は朝から明るい青空が広がっていて、とても気分が良い。

いや、気持ちが弾んでいるのは彼女との約束があるからだろう。

校門の所に立っていた俺は、こちらに歩いてくる生徒たちの中に彼女の姿を見つけた。

声をかけようとしたところで、彼女も俺に気付いてパッと表情を輝かせた。

「清純先輩っ ごめんなさい、遅れて。今日はHRが長引いてしまって…」

「ううん、大丈夫だよ。俺も来たばっかりだし。」

小走りで駆け寄ってきた彼女に笑いかけ、一緒に歩き出す。

彼女の歩幅に合わせて普段よりゆっくり歩くのは好きだと思う。

「それで、どこに行こっか?」

「どこでもいいです。先輩と一緒なら。」

可愛いことを言う彼女は俺を見上げて、ふんわりと柔らかく微笑んだ。

それにつられて自分の頬も緩んでしまうのが分かる。

「とりあえず、駅前に行く? いろんな店があるし。」

「はい。……あ。」

「どうしたの、なまえちゃん?」

「駅前の近くにあるケーキ屋さんの新作がおいしいって友達が言ってたのを思い出したんです。そこ、喫茶スペースがあるんですけど…」

「うん、じゃあ、そこに寄ろうか。」

「はいっ ありがとうございます。」

「いえいえ。」

隣を歩く彼女の楽しそうな様子を見て、自分も同じような表情をしているんじゃないかと思う。

「いいですよね、こういうの……恋人っぽくて。」

「そうだね。デート、だしね。」

瞳を和ませる彼女に、少し照れながら返せば、彼女も頬を淡く染めてはにかんだ。

「どうせなら…もっと恋人らしいこと、する?」

少し緊張しながら、隣を歩く彼女の手をそっと握る。

「せ、先輩…っ」

「…だめ、だった?」

ビクリと震えた彼女の手を離そうとしたら、控えめに握り返された。

「ちょっとびっくりしただけで…嬉しいです。」

恥かしそうに先程よりも頬を赤くした彼女の言葉に安心して、その小さな手を握り直す。

重なった手の平から彼女の温もりが優しく伝わってくる。

それが、すごく幸せだ。

「どきどき、しちゃいます。」

「俺もだよ。」

心臓がいつもより速い鼓動を刻んでいるけれど、それがどこか心地良くもある。

「でも、離したくない。」

「私もです。」

お互いに同じ気持ちでいるのが嬉しいと思っていると、繋いでいる彼女の手に力が込められた。

隣を見れば、俺の視線に気付いた彼女が照れたような笑顔を向けてくれて、俺も彼女に笑い返した。



幸福を重ねる

(2011.11.23)

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