恋人(同学年)/ヒロイン視点
「なまえ、構ってやるからこっちに来い。」
恋人にかけるには少し尊大な言葉が聞こえて、窓の外の景色をぼんやりと眺めていた私は僅かに苦笑しながら振り返った。
いつの間にか景吾は自分専用のソファーに座っていて、優雅に足を組んでいる。
「仕事、終わったの?」
「いいや、一区切り付いたから休憩するだけだ。…早く来い。」
残念ながら生徒会の仕事はまだ終わらないらしい。
「うん。……そうだ。何か飲み物、買って来ようか?」
ソファーの傍まで来たところで、そう聞くと、
「要らねぇ。」
手首を掴まれて引っ張られ、景吾の隣に座らされた。
「景吾…?」
ついさっき私を呼んだ時は機嫌が良さそうだったのに、景吾は不機嫌そうな雰囲気を纏っている。
「俺が来いって言ったら、さっさと来いよ。」
「…うん。」
分かり易い景吾の様子に、つい口元が緩んでしまう。
「何笑ってやがる。」
「ううん、ごめんね。」
拗ねてしまったらしい景吾を可愛いと思ったなんて、更に機嫌を損なうことは言えない。
「景吾…好きだよ。」
言いながら、私は景吾に抱き付いた。
「そんなんで誤魔化されねぇからな。」
言葉とは裏腹に、景吾の指は私の髪を優しく梳く。
「誤魔化そうとなんてしてないよ。」
景吾の頬にそっと口付けるけど、まだ機嫌は良くはならない。
「…大好き。」
今度はちゃんと唇に口付けると、景吾の手が私の髪に差し込まれた。
「…んっ………景吾…」
「黙ってろ。」
繰り返される口付けの合間に言葉を紡ごうとすると、すぐに遮られた。
お互いの唇の隙間から洩れる吐息が熱い。
徐々に景吾が体重をかけてきて、私はソファーに押し倒されてしまった。
両腕を強く押さえ付けられるけど、繰り返される口付けは優しいまま。
「休憩、長くない?」
「まだいい。」
これ以上何か言うと、また景吾の機嫌が悪くなりそうで、私は身体の力を抜いた。
「なまえ…」
景吾は押さえ付けていた私の腕を放して、唇を啄みながら髪を撫でてくれる。
この戯れの時間が少しでも長く続けばいいと心の中で願いながら、私は景吾の背に手を回した。
至福のとき
(2011.08.10)
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