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同学年/謙也視点


なぜか火曜日と木曜日の部活はオサムちゃんのお笑い講座になっている。

少し前までは自由参加のそれによく参加していたが、最近は自主練をすることが多い。

というのは、いつもの部活の終了時刻よりも早くに練習を切り上げて帰るためだ。

そんな訳で、火曜日である今日も早めに自主練を終わらせ、俺は校門に向かって歩いていた。

中途半端な時間だからか、自分以外の生徒はほとんど歩いていない。

走り出しそうになるのを我慢して普段よりもゆっくりと歩く。

(今日は会えるとエエな。)

俺が密かに想いを寄せている彼女とはクラスの違うせいで会う機会が少ない。

だから自主練を切り上げ、前にたまたま彼女に会えた時間に合わせて帰っているのだ。

しかしながら、彼女はいつも同じ時間に帰っている訳ではないらしく、毎回は会えないのだが。

(クラスまで行けば会えるんやけど。)

それが出来たら苦労はしないというものだ。

まだ彼女とは友達と呼べるほど親しくはないから、わざわざ別のクラスまで行って話し掛けるというのはハードルが高い。

とは言え、このままでは何の進展も望めないのも確かだから悩ましい。

「忍足くん。」

「へあっ?!」

急に声をかけられ、グルグル考えていた俺は素っ頓狂な声を出してしまった。

「ご、ごめんね。そんなに驚くなんて思わなくて。」

立ち止まって後ろを振り返れば、今まさに考えていた彼女が申し訳なさそうな顔をして立っていた。

彼女に会えた嬉しさに、考えていた事はどっかに飛んでいく。

「いや、ちょっとボーッとしとっただけやから、気にせんといてや。」

「そう…?」

「おん。それより偶然やな。今、帰りなん?」

「そうだよ。…最近、よく会うよね。」

「せ、せやな。」

一瞬焦ったが、偶然を装っているのは彼女にはバレていないようだ。

話しながら隣に並んだ彼女の歩幅に合わせて歩き出す。

途中まで帰り道が同じだというのもあり、会えば一緒に帰るのは自然の流れになっている。

ここまではいい感じなのでだが、どうやって距離を縮めたらいいものか。

「そうだ、忍足くん、よかったらゼリー食べない?」

「ゼリーって?」

「今日は料理部でグレープフルーツのゼリーを作ったの。果肉も入ってて美味しいと思うよ。」

「俺がもろうてもエエの?」

「うん、もちろん。遠慮しないでいいよ。」

「ほなら、ありがたく貰うわ。ありがとうな。……あっ」

「どうかした?」

「あー、その…」

可愛らしく首を傾げる彼女から少し視線を逸らし、首の後ろを掻きながら口を開く。

「どうせやったら、一緒に食べへん?」

思いきって誘ってみたものの、不自然じゃないだろうかと気が気じゃない。

「そうだね。さっき冷蔵庫から出したばかりだから、まだ冷たいだろうし。」

彼女は少し驚いたようだったけど、すぐにふわりと微笑んだ。

「っ、…ほな、この先の公園に寄ろうや。」

「うん。…ありがとう。」

「へ? なんで自分まで礼言うんや?」

「その……嬉しかった、から。」

ぽそっと言って、少し俯いた彼女はほんのりと頬を染めていた。

そんな彼女の可愛い姿に、くらりと眩暈がしそうになった。



君への想いで胸いっぱい

(2011.07.24)

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