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後輩/マネージャー/ヒロイン視点


今日は跡部部長が夕食をおごってくれるということで、練習が終わった後、レギュラーと正マネの皆で街中を歩いて移動していた。

一番後ろをのんびり歩いていた私は、アクセサリーショップのショーウィンドウに【新作入荷】の文字を見かけて立ち止まった。

少しくらいなら大丈夫かと思い、目立つようにディスプレイされているアクセサリーを見る。

どれも素敵だけれど、そのうちの一つ、可愛らしいデザインのブレスレットが特に気になった。

「いいなぁ。……って、見入ってる場合じゃなかった!」

あわてて皆が歩いていった方向を見るけれど、もう姿は見えなくなっていた。

「はぐれちゃった。」

食事に行くお店の名前は聞いていたけれど、知らない場所だったから、このままじゃ合流できない。

「そうだ、携帯で……あっ、嘘…っ」

鞄から携帯電話を取り出し、番号を発信しようとすると、充電が切れてしまった。

「はぁ……仕方ないか。残念だけど、今日は帰ろう。」

跡部部長が連れて行ってくれる所はいつもおいしいから、とても楽しみだったのに。

携帯を鞄に戻し、テンションの下がった私はトボトボと駅のほうへ歩き出した。



「なまえちゃん、ここにおったんか。」

少し歩いたところで、後ろから声がしたと同時に肩に手を置かれた。

驚いて振り返ると、少し息を切らした忍足先輩が立っていた。

「忍足先輩…!」

「いきなり居なくなったらアカンやろ。」

忍足先輩はため息まじりに言いながら私の頭にぽんと軽く手を乗せた。

「す、すみませんっ あの、わざわざ探してくれたんですか?」

「それはそうやろ。心配したんやで。」

「ごめんなさい。それと……ありがとうございます。」

「分かってくれたら良えんや。別に怒ってへんし。」

下げた頭を上げると、忍足先輩は気にしていないというように私の頭をなでた。

「ほな、行こか。」

忍足先輩は私の頭から手を離すと、今度は手を取って歩き始めた。

つられて私も歩き出したけれど、繋がれた手が気になってしまう。

「あの、忍足先輩……手を…」

「またはぐれたら敵わんからな。」

戸惑っている私に向かって微笑んだ忍足先輩は、繋いでいる手を握り直した。

「っ……今度は大丈夫です。」

なんだか子供扱いされているように思えて、私は少し恥ずかしかった。

「自分、結構マイペースやし、目が離せへんわ。」

どうやら、忍足先輩は私の手を離してくれる気はないらしい。

私よりも大きな忍足先輩の手は少し骨ばっていて、当たり前だけれど、男の人の手だった。

(なんか、ちょっと……ドキドキする、かも。)

少し熱を持った顔を見られないように、私はうつむいて足元に視線を落とした。



恋の予感

(2011.05.10)

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