short


恋人(同学年)/ヒロイン視点


この間まで咲き誇っていた薄紅色の花はすっかり散ってしまい、今は新緑が眩しい。

学校の中庭にある木の下、木洩れ日が降り注ぐそこで、私は午後のひと時を過ごしていた。

優しい時間が流れていて、膝の上にある重みが愛おしい。

微かな寝息を立てて眠っている、その幸せそうな寝顔を見ていると、自分まで幸せな気持ちになるから不思議だ。

「ほんとに幸せそう。」

くるくるした柔らかな金色の髪にそっと触れ、起こしてしまわないように優しく撫でる。

「……私も……眠くなって…きちゃった、かも…」

穏やかな陽気に眠りを誘われ、徐々に落ちていく意識。



ふと、微睡みの中から目が覚める。

「なんだぁ、もう起きちまったのか。」

その声に、自分の膝へと視線を落とせば、完全に起きているジローと目が合った。

「おはよ、なまえ。」

「……おはよ、う…?」

ニコニコと笑うジローに、ぼんやりとしながら返す。

「まだ寝ぼけてんのか?」

「……!! 寝顔見られた!? やだ、恥ずかしいっ!」

ちゃんと目が覚めて状況を理解した途端、恥ずかしさで顔が熱くなる。

「うん、すげー可愛いかった。」

「なっ……そういう問題じゃ…っ」

「あははっ 顔真っ赤。可愛E〜」

「もうっ……知らない!」

恥ずかしさに耐えられなくなって、私は思いっきり顔を横に逸らした。

「照れなくてもいいのに。マジ可愛Eー!」

むくりと起き上がったジローは、そっぽを向いている私にガバッと抱き着いてきた。

「ちょっ…離してっ」

「え〜 やだ。」

胸を押し返そうとしたら、さらにきつく抱き締められた。

「良い匂い〜 柔らかい〜」

「っ〜〜〜!」

「なまえ、大好き。」

「っ……(何か、ずるい。)」

そのたった一言で抵抗を止めてしまう自分は、ジローに相当甘いと思う。

「んー? 何か言った?」

「ううん。……私も好きだよ、ジロー。」

私は顔の熱が治まらないまま、ジローの背中に手を回した。



あなたは幸せをふりまく

(2010.12.05)

- ナノ -