恋人/ヒロイン視点
明日は休日ということもあり、部屋の明かりを消してベッドに入ってからも謙也とメッセージのやり取りを続けていた。
内容は他愛のないものだけど話題は尽きなくて、気付けば日付が変わっていた。
部屋の中が真っ暗で静まり返っているせいだろうか、なんだか無性に寂しい気持ちになってしまった。
やっぱり会いたいな
ね、こっちまで走ってきてよ
無茶言いなや
ごめん
謝らんでエエし!
俺もなまえに会いたい思うとるっちゅー話や
お互いに会いたい気持ちが募っているのは分かっているから言わないようにしていたのに、と後悔する。
また少し雑談をしてから、もう遅い時間だからと話を切り上げた。
● ● ●目が覚めたのは、だいぶ部屋が明るくなってきてからだった。
のろのろと身支度をして、朝と昼は兼用にして何を食べようかと、まだ上手く回らない頭で考える。
だらしなくリビングのソファーに座っていたら、インターフォンが鳴った。
今日は荷物が届くから受け取っておいて欲しいと家族に頼まれていたことを思い出す。
ペタペタと歩いて玄関へと向かい、ドアを開けると、そこにいたのは――
「走ってきたで。なまえに会い、…おわっ!」
太陽の光に照らされているキラキラした笑顔を見て、私は謙也に正面から思いきり抱き着いた。
「なんでいるの…?」
「ははっ、ビックリしたやろ? 走ってきたっちゅーのは冗談やけど。……とりあえず、中に入れてや。」
「…うん。」
いったん謙也から離れて、自分以外の家族はいないということもあり、リビングへと案内する。
そして、ソファーに座った謙也の膝の上にお邪魔した。
向かい合わせで、いわゆる女の子座りになっているから、目線が同じくらいになっている。
「今日はえらい甘えたやな。」
にこにこと嬉しそうに笑いながら謙也は私の腰に両手を回す。
「謙也と会うの久しぶりなんだもん。」
「せやな。俺も会いたかったで。」
首に両腕を回して抱き着いた私の頭に謙也が頬擦りをする。
「急に思い立って来たわけじゃないよね?」
「そら、さすがにな。連休に合わせて前から計画しててん。」
「それなのに教えてくれなかったんだ。」
本当に寂しかったから、どうせなら前もって知っていたかった。
「……もしかして、拗ねとる?」
答える代わりに、謙也の肩に額をぐりぐり押し付ける。
「ごめんやで。」
おろおろした様子の謙也が私の背中をポンポンと撫でる。
「次からはちゃんと教えてね。」
「おん。」
顔を上げた私は膝立ちになって、謙也の前髪を掻き分けて額に唇を押し当てた。
「会いに来てくれて、すごく嬉しいよ。」
今度は謙也の頬に唇を寄せて、明るい金髪をわしゃわしゃと掻き回す。
「わ、ちょ…っ セットしとるっちゅーのに。」
「ごめんごめん。」
笑いながら形だけ謝った私は謙也の鼻先に唇を落とした。
「口にはしてくれへんの?」
顔を離した私を見上げた謙也がちょっと不満そうな声で言う。
「したいなら、してもいいよ?」
そう返して、私は目を細めて悪戯っぽく笑った。
「そう来るんか。まあ、エエけどな。」
謙也の手が私の後頭部に添えられて、ぐっと顔を引き寄せられる。
「目ぇ閉じひんの?」
唇が触れそうな距離で言われて、私は大人しく目を閉じて謙也の首の後ろに両手を回す。
「好きやで、なまえ。」
甘さを含んだ声に耳をくすぐられ、言葉を返す間もなく唇を覆われた。
流星のような
(2024.05.02)
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