short


恋人/ヒロイン視点


真っ白い雪を集めて楕円形に固め、楪の葉と南天の赤い実をつければ、可愛らしい雪うさぎが出来上がる。

先に作ったものより少し小さな雪うさぎを作り、二羽を芝生に積もっている雪の上に置いた。

「ねぇ、蓮二、こっち来て。」

私は後ろを振り返り、日当たりの良い縁側で本を読んでいる蓮二に声をかけた。

「ほら、可愛いでしょ?」

「…ああ、そうだな。」

隣に並んだ蓮二を見上げると、少し不機嫌そうな雰囲気を纏っていることに気付いた。

「どうしたの? 機嫌悪いね。」

「別に。」

「嘘。怒っているじゃない。……まさか、雪に妬いただなんて言わないわよね?」

私が指摘すると、蓮二は皮肉っぽいような自嘲めいたような、微妙な笑みを口許に浮かべた。

「雪に嫉妬するなど有り得ないな。久しぶりの休日に会った恋人が家に来た途端に挨拶もそこそこにして自分を顧みずに雪遊びに夢中になっていたくらいの事で機嫌を損ねるなどという子供染みた振る舞いを俺がする訳が無い。それともお前は俺がそんな狭量な人間だとでも思っているのか。もし万が一にもそうであるならば非常に心外だな。」

よく淀みなく言ったなぁと変に感心しながら、私はくすぐったいような気持ちになった。

「何が可笑しい。」

頬を緩ませた私を見て、蓮二は眉間に皺を刻んだ。

「だって、普段はあんなに落ち着き払っているのに…たまにそうやって、すごく子供っぽいんだもの。」

「違うと言っているだろう。…それより、手が冷えてしまっている。」

蓮二は小さく溜息をつくと、私の両手をその大きな手で包み込んだ。

「……ありがとう。」

じわりと伝わってくる温もりに、手だけじゃなく心も温かくなる。

さらに頬が緩んだけれど、今度は何も言われなかった。



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