short


恋人/ヒロイン視点


窓の外を見れば、眩しいくらいに空は青く晴れ渡っている。

せっかくの休日なのだし、本当はどこかに出掛けたかったけど、彼が渋るものだから仕方なく家の中で過ごしていた。

「重いよ、雅治。……どうしたの?」

雅治の部屋にあった雑誌をパラパラ捲っていると、不意に背中から圧しかかってきた重み。

「別に、…何でもなか。」

言葉とは裏腹に、雅治は私を抱き締める腕の力を強める。

「邪魔だから離れて?」

肩に回っている雅治の腕を軽く叩く。

「冷たいのぅ。」

後ろから伸びてきた手は私から雑誌を取り上げると、それを乱暴に放り投げた。

「雅治?」

「お前さんが足りん。」

そう言って床に座り直した雅治は私を自分の足の間に座らせ、私のおなかの前で手を組んだ。

「ゆっくりできる時間、なかったもんね。」

片手を伸ばし、私の肩に額をくっつけている雅治の少し痛んだ銀髪を撫でる。

「誰かさんは少しでも人がいると触らせてくれんし。」

恨みがましく言われ、少し困ってしまう。

「それは……、仕方ないじゃない。」

「……………」

「……機嫌直してよ、雅治。」

怒ったフリなのだと分かっていたけれど、私は振り向いて雅治に口付けた。

髪に雅治の手が差し込まれ、すぐに離れることは許されなかった。


(2010.11.21〜2011.01.06)

- ナノ -