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恋人(年下)/跡部視点


招待したゲストと歓談しながら会場にも目を配り、大きなトラブルが起きることもなく無事にパーティーを終えることが出来た。

窮屈な襟元を緩めながら、自分の部屋へ向かう足は自然と速くなる。

「なまえ、待たせたな。」

自室のドアを開けると同時に自分を待っている筈の恋人の名を呼んだが、返事が無い。

部屋の中を見渡せば、ソファーに横になっている彼女の姿があった。

先に退出させたものの、慣れないパーティーでかなり緊張していた彼女は疲れて眠ってしまったらしい。

ソファーの前に膝を付き、緩くウェーブがかけられている彼女の髪をそっと撫でる。

控えめな色が乗せられた小さな唇からは微かな寝息が洩れている。

温かみのある色のドレスに身を包んだままの彼女の寝顔は酷く無防備で幼い。

「まだ子供だな。」

「……、…ん……」

小さく身じろぎをした彼女がゆっくりと目を開ける。

「なまえ。」

まだ夢現の瞳を覗き込んで笑いかけてやれば、眠そうな顔はどこへやら。

「っ…景吾くん! お帰りなさいっ」

嬉しそうに顔を綻ばせる彼女に、刺々しかった気持ちが和らぐ。

「ああ、ただいま。」

身体を起こして俺の首に抱き付いてくる彼女を抱き締め返す。

「どうした? やけに甘えただな。」

抱き付いたまま、俺の首元に顔を埋めている彼女の頭を撫でてやる。

「景吾くん、好き。大好き。」

俺の耳を擽る彼女のいつもより少し甘い声。

「俺も好きだぜ、なまえ。」

自分も彼女の耳元へ囁いてやる。

「ほんとに、好きだよ。」

俺の首に回していた腕を解いて、肩に手を置いた彼女が至近距離で見つめてくる。

どこか不安そうな色が見え隠れする彼女の瞳。

「どうしたんだ?」

俺が頬に触れると、目を細めて微笑んだ彼女だが、その瞳は頼りなげに揺れている。

「ずっと一緒に、いられるよね?」

頬に添えた俺の手に自分の手を重ねた彼女が、不安そうに聞いてくる。

「当然だ。ずっと俺と一緒にいろ、と言っただろ。」

「うん。でも、時々……すごく遠いよ。」

今にも零れ落ちそうな涙で濡れる瞳と震える睫毛。

「勝手に俺を遠ざけるな。」

「……ごめん、なさい…」

少し俯いた彼女は再び顔を上げると、ゆっくりと俺に顔を近付けてきて、微かに唇が触れ合った。

「好きだよ、景吾くん。」

震えている小さな身体を抱き締め、柔らかな髪にそっと唇を落とす。

「大丈夫だ、なまえ。」

縋るような瞳で俺を見る彼女の頬を撫でる。

彼女が不安がる理由は分かっている。

この先、必ず降りかかってくるだろう問題。

「なまえ、この先何があっても、俺はお前の手を離さない。」

「…うん。」

「絶対に、お前を離さねぇよ。」

「景吾くん…私もだよ。」

俺は彼女をきつく抱き締め、唇を重ねた。


(2012.12.21)

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