ひとめぼれ | ナノ


ヒロイン視点


放課後、掃除当番を終えた私は生徒のまばらな教室で忍足くんとお話をしていた。

部活の後輩だから気なるのか、財前くんとのことを聞かれたのだ。

「そうやったんか。始業式ん日になぁ。」

「うん、そうなの。財前くんのことは印象に残っていたから、今日はいろいろお話ができて楽しかったよ。」

私がそう言うと、忍足くんはなんだかびっくりしたような顔をして固まってしまった。

「どうしたの?」

「いや、財前が誰かと楽しく話すっちゅーのが想像できんかった。」

「え、どうして?」

今度は私が驚く番だった。

「アイツ、おしゃべりなほうやないし、先輩を先輩と思ってへんでキツイことぬかしよるし。」

「そ、そうなの? ふつうに礼儀正しかったよ?」

関西弁だからか、標準語の敬語と少し違う感じではあったけれど。

「財前くんって、人見知りする子なのかな?」

「は?」

「なんとなくだけど、少しぎこちないというか気を遣われているような気がしたんだよね。」

話しながら、どことなく緊張しているような様子だった財前くんのことを思い出す。

「ありえへん! そんなん財前ちゃうわ!」

「なに騒いどんねん、謙也。」

「やって、白石…」

忍足くんは会話に加わってきた白石くんに、私が話した内容を説明し始めた。

「みょうじさんは女の子やし、俺らと話す時とはちゃうんやろ。」

「いや、そんな奴ちゃうやんけ、アイツは。」

話を聞き終わった白石くんはなにか納得した様子だけど、忍足くんはまだ信じられないみたいだ。

どうやら、財前くんに対する私の印象と忍足くんの知っている財前くんの姿には相当なギャップがあるらしい。

「良い子だと思うんだけどな…」

「いや別に、悪いヤツとは言ってへんで。口は悪いけどな。」

「それは謙也が先輩として敬われてないだけやろ。」

「な、何やと!?」

「二人ともケンカはだめだよ…っ」

なんだか雲行きが怪しくなってきて、私は言い合いになりそうな二人を止めに入った。

「大丈夫、こんなん喧嘩のうちに入らんて。」

「…そう、なの?」

にっこりと爽やかに笑う白石くんだけど、忍足くんはむすっとして少し怒っているみたいだ。

「それより、財前と仲良くしたってな。なんやかんやで俺らには可愛い後輩やし。」

「うん、それはもちろん。」

「なんか生意気なこととか言われたら、俺らに言うんやで?」

「…ありがとう、忍足くん。」

そんなことはないと思うけれど、忍足くんの気遣いは素直に嬉しいからお礼を言う。

「ほな、謙也、そろそろ部活に行こか。」

「もうそないな時間か。」

「ケガに気をつけて頑張ってね。」

「おん、ありがとうな。」

「ほな、また明日。気ぃ付けて帰りや、みょうじ。」

教室を出て行く二人を見送りながら、私はまた財前くんと会って話がしてみたいなと思った。



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