ヒロイン視点 私は光くんに連れられて、大通りから脇道に入った場所にあるアクセサリーショップに立ち寄った。 光くんが店員さんと話している間、私はお店の中を見て回っていた。 こぢんまりとしたお店だけど、品揃えが豊富で見応えがある。 (これも可愛いな。) 自分が好きな感じのものが色々あって、見ているだけで楽しい。 「なまえさん、ピアスに興味あったんですか?」 声がした隣を見れば、話が終わったらしい光くんが立っていた。 「うん、少しね。可愛いのを見るとつけてみたいって思うんだけど…穴を開けるのは痛いよね?」 「個人差もあるんでなんとも言われへんですけど、多かれ少なかれ痛みはありますよ。」 「…そうだよね。」 やっぱりそれなりに痛いんだろうなと、私はなにもついていない自分の耳たぶをそっと触った。 「種類は少ないですけど、マグピとか…あと、あっちにイヤリングもありますよ。」 (いいな、これ。) 目に留まったのは、金具と同じゴールドのリボンの形をしたチャームの下にピンク色のガラスビーズがぶらさがっているイヤリングだ。 すごく気に入ったし、今日つけている細いリボンがモチーフのネックレスに合うんじゃないかなと思う。 値札を確認してみると、商品の値段としては妥当だと思うけれど、ふつうの学生には少し厳しい金額だった。 店内の照明を反射してきらきら光るイヤリングと睨めっこをしていると、すっと横から手が伸びてきた。 「そないに気になるんやったら、着けてみたらええんとちゃいます?」 「…そうだね。着けてみようかな。」 台紙から外されたイヤリングを手渡されて、それを受け取る。 備え付けの小さな鏡を見ながら、イヤリングを着けようとするのだけれど上手くかない。 「俺がやったりましょうか?」 「……お願いします。」 手間取る私を見兼ねて声をかけてくれた光くんに、少し情けない気持ちになりながらイヤリングを渡した。 (これは……ちょっと落ち着かない、かも。) 当たり前だけど、光くんとの距離がすごく近い。 しかも、光くんの少し冷たい指が私の耳に触れている。 「なまえさん、耳の形きれいですね。」 「えっ……あ、ありがとう…?」 「…すんません、変なこと言うて。」 「ううん。初めて言われたから少しびっくりしちゃっただけだよ。えっと…ピアスとかしてると、耳の形って気になるの?」 「ええ、まあ。……出来ましたけど、耳痛ないですか?」 「大丈夫だよ、ありがとう。」 少し屈んで鏡を覗けば、細いチェーンの先でリボンのチャームとしずく型のビーズが揺れている。 「ねぇ、どうかな?」 ちゃんと似合っているのか、自分ではいまいち分からなくて、隣に立っている光くんに感想を聞いてみる。 「ええんやないですか。」 「本当?」 「ほんまに、その…可愛らしい感じで、なまえさんによう似合っとると思います。」 ほんのりと頬を染めた光くんがかすかに微笑って、そういう柔らかい表情もするのだと、少しドキリとした。 「あ、ありがとう。」 また自分も頬が赤くなるのを自覚しながら、私はイヤリングの購入を決めたのだった。 ← |