子猫と戯れる 仁王視点 部活を途中で抜け出して図書室に来てみると、彼女は殆んど人の来ないと思われる、堅い内容の本が並ぶ書架の前にいた。 独特の匂いがする中、彼女は劣化により変色してしまっている本のページを捲っている。 さほど気に入らなかったのか、彼女はその本を閉じて書架に戻した。 「なまえ。」 別の本を取ろうとしている彼女に声をかけると、俺の存在に全く気付いていなかったようで、肩を小さく跳ねさせた。 「…仁王くん。どうして、ここに?」 「今は休憩中じゃき。」 「だからといって、こんな所に居ていいの?」 「分からんのか。」 大袈裟に溜息を吐いてみせれば、彼女は不思議そうに首を傾げる。 「お前さんに会いに来たんよ。」 彼女を抱き締めて艶やかな髪に頬を寄せれば、ほんのりと甘い香りが鼻先を掠めた。 抵抗しない彼女に、満足感を覚える。 「仁王くん…?」 白い首筋に何度か唇を落として、滑らかな肌に軽く歯を立てる。 「ぁ…っ」 ビクリと身体を揺らした彼女の反応に俺は口元を歪め、噛み付いたままの首筋に舌を這わせた。 このまま彼女と遊んでやりたいが、これ以上は俺が色々とやばい。 拘束は解かないまま、細い首筋に埋めていた顔を上げる。 腕の中にいる彼女を見下ろすと、紅い顔をした彼女が眉を寄せて俺を睨み付けてきた。 「以前、狼は好きではないと言った筈よ。」 「安心しんしゃい。食べようとは思ってないけぇ(今のところは、じゃけど)。」 俺の肩を押し返そうとしている彼女の手を掴み、その細い指を甘噛みしてやる。 「なっ、何をするの…っ」 先程から俺に翻弄されている彼女の姿が可愛くて仕方ない。 「ただの愛情表現じゃよ。何せ、俺は子猫じゃし?」 俺は目を細めて、彼女の両手首を掴んで書架に押さえ付けた。 「可愛がってやるぜよ、なまえ。」 「止め…んっ」 非力な抵抗をしてくる彼女の唇を塞ぐ。 角度を変えて何度も口付け、彼女の柔らかな唇を自分の唇で覆って軽く噛む。 深く唇を合わせれば、彼女の熱い吐息が口の中に流れ込んできた。 上手く息が出来ないらしい彼女の唇を解放してやると、きつく閉じていた瞼が薄らと開いた。 「…っ、……溺れて…しまうっ、かと……」 濡れた瞳を伏せた睫毛で隠し、息を乱している彼女。 彼女は知らないだろう。 本当に溺れているのは俺の方だと―― (2013.06.30) |