君といると心が休まる | ナノ
跡部視点


「なまえ、今日は俺が淹れてやるからお前は座って待ってろ。」

生徒会室に入ってすぐに給湯スペースへ向かおうとする彼女に声をかければ、驚いたように俺を振り返った。

「景吾くん、紅茶淹れられるの?」

「…お前、俺を何だと思ってやがる。普段は自分でやる必要が無いというだけで、淹れ方くらい知っている。」

「そ、そうだよね。ごめんなさい。」

「いちいち謝らなくていい。それより、珍しい茶葉が手に入ったんだ。楽しみに待ってな。」

「うん、ありがとう。」

今度はちゃんと笑った彼女に満足して、俺は奥にある給湯スペースに向かった。



「わぁ…可愛い。」

淹れたての紅茶と色とりどりのマカロン・パリジャンを並べた皿をテーブルの上に置くと、彼女はパッと目を輝かせた。

「ほんとに甘いものが好きだよな。」

自分の分の紅茶もテーブルに置き、彼女の隣に腰を下ろす。

「うん、好きだよ。…早速もらってもいいかな?」

期待に満ちた彼女の様子に、自分の口許には自然と笑みが浮かぶ。

「勿論だ。遠慮しねぇで好きなだけ食べな。」

「ありがとう。でも、そんなにたくさんは食べないよ。…多分、だけどね。」

小さく笑った彼女は迷っているらしく、皿に並んだマカロンをじっと見ている。

「これにしたらどうだ?」

取り敢えず無難に、ショコラ味のマカロンを摘まみ、彼女の口元に近付ける。

「け、景吾くんっ…?!」

「ほら、口を開けろ。……なまえ。」

「っ、……いただき、ます。」

名前を呼んで促すと、彼女は恥ずかしそうに頬を染めながら、俺の手にあるマカロンを小さくかじった。

「それで味が分かるのかよ?」

からかうように言ってやると、彼女はますます頬を紅くして俺を睨んできた。

全く迫力が無いどころか可愛いだけだが。

「こんな食べさせられ方をしたら、どのみち味なんて分からないよ。」

「勿体無ぇな。美味いのに。」

彼女を見返しながら、少しだけかじられたマカロンを自分の口に入れる。

「どうした?」

「な、なんでもないよ…っ」

わざと口の端を上げて見せると、彼女は俺から視線を逸らして湯気の立っているティーカップを手に取った。

耳まで紅くしてティーカップを傾ける彼女の姿に、俺は口許の笑みを深める。

「ほんのり甘くておいしいね、この紅茶。」

「気に入ったのなら何よりだ。」

まだ少し頬を染めたままで笑顔を向ける彼女に軽く笑い返し、自分も深いオレンジ色をした紅茶を口に運んだ。


(2012.03.17)
 

【ジョルジ】
水色は深いオレンジ色。ストレートティー向き。甘い風味が特徴。ロシアの紅茶で、日本国内では滅多にお目にかかれないらしい。

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