クリスマス



「すごい…綺麗。」

光り輝く大きなクリスマスツリーに顔を綻ばせる彼女を見て、俺も顔が緩む。

「ありがとう、謙也。」

「…おん。」

彼女がキラキラした笑顔を俺に向けるから、どうしたって照れてしまう。

けれど、本題はこれからだと一度大きく息を吸う。

「なあ、なまえ。」

俺はダウンジャケットのポケットに手を突っ込んで、中に忍ばせてあるものを握り締めた。

「これ、やるわ。その……ちょお早いんやけど、クリスマスプレゼントな。」

勢いよくプレゼントを差し出すと、彼女は驚いたように目をパチクリさせた。

「いいの?」

おずおずと聞いてきた彼女の手を掴み、その小さな手の平の上に店で包んでもらったプレゼントを乗せる。

「エエから、もらってや。」

乱暴に扱ったせいか、箱のラッピングが少し崩れてしまっていた。

こんなハズじゃなかったのに…と、自分の不器用さにガッカリする。

でも、少しの間プレゼントを見つめた彼女は俺を見上げると、嬉しそうに笑った。

「ありがとう、謙也。一緒にツリーを見られただけでも嬉しいのに、プレゼントまで…」

「おん。……そんでな、なまえ。」

バクバクと煩い心臓の音を無視して、彼女を真っ直ぐに見つめる。

「俺、お前が好きやねん。せやから……俺と付き合うて欲しい。」

彼女は大きく目を見開き、プレゼントを持っていない方の手で口元を覆った。

隠せていない頬を赤く染めた彼女の反応に、期待せずにはいられない。

「答え、くれるか?」

「……よ、よろしく…お願い、します。」

「よっしゃあ!」

「きゃっ…!」

喜びのあまり、俺は彼女を思い切り抱き締めた。

「なまえ、好きや…っ」

この際、周りに人が大勢いるとかどうでもいい。

腕の中に捕まえた彼女のことしか見えないし考えられない。

「私も…謙也が好きだよ。」

彼女の小さな声は俺の耳にはちゃんと届いて、俺はさらに強く彼女を抱き締めた。

「謙也っ、ちょっと苦しいよ…っ」

「す、スマン! 大丈夫か?!」

軽く腕を叩かれ、慌てて彼女を抱き締めていた腕を解いた。

「う、うん…大丈夫。」

「良かった。……なあ、なまえ…キス、してもエエ?」

「え…、えぇっ!?」

「めっちゃ好きやから、キスしたいんやけど。」

自分も赤い顔をしているんだろうなと思いながら、彼女の火照った頬を両手で包む。

少し潤んだ瞳に俺だけを映した彼女の唇から白い息が漏れる。

「…いいよ。」

小さく消え入りそうな声で頷いた彼女は、静かに目を閉じた。

伏せられた睫と唇は微かに震えている。

「なまえ…」

出来る限り優しく名前を呼んで、俺は自分の唇を彼女のそれにそっと重ねた。


(2012.12.15)

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