「すげー楽しそう! なまえ、早く行こ!」 ワクワクしながら夏祭りが行われている公園の広場につくと、出店がいっぱい並んでて一気にテンションが上がる。 「わわっ! ジロくん、待って…っ」 「早く早く。」 俺は繋いでいる彼女の手をぐいぐい引っぱって駆け出した。 「輪投げって意外と難しい。…ジロくんはすごいね。」 「へへっ…なんか分かんないけど上手く出来た。取ったお菓子、明日学校で一緒に食べようね。」 「うん。……あ、わたあめ売ってる。買ってきていい?」 「いいよ、一緒に行こ。」 繋いだ手をブラブラさせながら、今度はわたあめが売っている屋台に向かう。 「夏祭りって感じだね。」 雲みたいな真っ白いわたあめを持った彼女が楽しそうに笑っていて、それだけで俺も楽しくなる。 それに、ヒマワリが描かれた水色の浴衣を着た彼女はいつもより可愛くて、すごくキラキラして見える。 「夏祭りって言ったら、焼きそばとかお好み焼きだよね。あと、かき氷も。」 「確か、あっちのほうに焼きそばの屋台があったよ?」 「じゃあ、そっち行こ。」 彼女が指差したほうへ向かって歩き出す。 「ジロくん、わたあめ食べる?」 「うん、ありがとー」 自分に向かって差し出されたわたあめにパクッとかじりついた。 ふわふわ甘いわたあめは口の中ですぐに溶けて消えていく。 「おいしいよね、なんか優しい味で。」 「そうだね〜 でも、俺はなまえのほうが甘くて好き。」 「え?」 きょとんとした顔でこっちを見た彼女の唇に自分の唇をくっつけた。 わたあめに隠れていて、たぶん周りの人には分からなかったと思う。 だけど、彼女はリンゴみたいに頬を紅く染めた。 「っ……ジロ、くん…」 「好きだよ、なまえ。」 にこっと笑いかけたけど、彼女は恥ずかしがって俯いてしまった。 どうしようかなと思っていると、彼女は繋いでいる手をきゅっと握り直した。 顔を上げた彼女は紅い顔をしたまま俺を見つめて、ふわりと柔らかい笑みを浮かべた。 「私も、ジロくんが好き。」 彼女があんまり可愛いから、俺は彼女の熱を持った頬に自分の唇を押し付けた。 (2011.08.07) ← |