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肌を刺すような冷たい空気の中を歩いて待ち合わせ場所に着けば、そこには既に彼女がいた。
「侑士!」
俺に気付いた途端、嬉しそうに顔を綻ばせた彼女は何かを両手に乗せたまま小走りで近付いてきた。
「アホ! 走ったら危ないやろ!」
珍しく降った雪は、うっすらと積もっているだけだが、足元は危ないだろう。
「大丈夫だよっ ……わあっ!?」
注意したそばから彼女は目の前でバランスを崩し、俺へと倒れ込んできた。
「だから言うたやろ。…あんま驚かさんといてや。」
彼女の両肩を支えて立たせてやる。
「ごめんごめん。…ありがとう。」
さして反省した様子もなく、彼女は緩く笑う。
「ちゃんと聞いとるん? こっちはめっちゃ焦ったんやで。ケガしたらどないすんねん。」
「はい…反省してます。」
しゅんとしてしまった彼女の頭を軽く撫でる。
「分かればええんや。……ところで、それ、何やの?」
彼女の手元を確認すると、持っていたのは雪の塊だった。
「あっ! 良かった、無事だ。見て見て、可愛いでしょ?」
彼女は俺の隣に移動すると、それを顔の高さまで持ち上げて見せてくれた。
白い雪の塊には、赤い実とギザギザの緑色の葉―おそらく柊だと思われる―がついている。
「雪うさぎ、か。上手いもんやな。」
「でしょ!」
「まあ、自分のが可愛えけどな。」
にこりと笑って言えば、瞬時に彼女は紅く頬を染め上げた。
「っ…、すぐそういうこと言うんだから、侑士は。……そうだっ、写メ撮って待受にしようっと。」
俺に背中を向けた彼女は地面にしゃがみ込み、雪うさぎをうっすらと積もっている雪の上に置いた。
バッグから取り出したケータイを雪うさぎに向かって構える彼女の耳が少し紅くて、俺は密かに笑いを噛み殺した。


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