ヒロイン視点 とぼとぼと校門まで歩きながら、ひどく沈んだ気持ちになる。 私は間が悪いのだろうか。 日吉くんはいつも不機嫌そうに表情をゆがめる。 邪魔をしたいわけじゃない。 日吉くんのために何かしたくて… 少しでもいいから日吉くんの役に立ちたくて… でも、勝手にそんな風に思ったところで、日吉くんには迷惑なのかもしれない。 「距離を置いたほうがいいのかな…?」 「なに一人で喋ってんだ。」 急にした声に驚いて顔を上げると、そこにいたのは跡部部長だった。 「な、なんでもないです。」 「それで誤魔化せると思ってんのかよ。話すついでに送ってやるから車に乗っていけ。」 その言葉に逆らえるはずもなく、私は言われるがまま校門の前に停まっていた部長の送迎用の車に乗った。 部長の前だと、いまだに少し緊張してしまう。 近寄りがたいわけではないけれど、存在感が他の人とは違うから。 「それで、悩んでいたのは日吉のことだな。」 「あの……どうして…?」 何も言っていないのに、あっさりと言い当てられてしまった。 「俺様を誰だと思ってやがる。分からないことなんざあるかよ。」 「……そう、ですよね。」 なんの迷いもなく発せられる言葉に、私は苦笑いをこぼすしかなかった。 きっと、この人に見抜けないことなどありはしないだろう。 「さっき『距離を置く』とか言っていたな。」 「はい。…日吉くんには、その……私、迷惑をかけてしまっているみたいで。……ですから…」 改めて自分で言葉にすると、さらに落ち込んでしまい、下を向いてしまう。 「日吉の奴にそう言われたのか?」 「いえ、何も言われていません。でも、私が悪いんです。勝手に心配して余計なことするから……だから、日吉くんを怒らせてしまって…」 そこまで言って、私は膝の上に置いてある手をぎゅっと握り締めた。 制服のスカートのプリーツが乱れる。 「まあ、距離を置いてみれば何か変わることもあるだろうよ。」 「あのっ、マネージャーの仕事はちゃんとやりますから!」 ハッとして顔を上げ、隣の跡部部長に向かって、あわてて付け足す。 「それは当然だろうが。」 「そ、そうですよね…」 「まあいい、大体分かった。あまり思い詰めないことだ。」 「…はい、ありがとうございます。」 ← |