三回忌。
どうして一年は一回忌なのに、二年は三回忌なんだろう。
なんて話をアヤたんにしたら、知るかと一蹴された。

平日。
ケータイを覗いて日付を見る度。
じわりと、涙じゃないものが込み上げる。
思わず手の甲に爪を立てた。
悲しみは風化した。
手の甲に残っていた無機質な冷たさは、突然出てくる事はなくなった。
今では意識しないと忘れそうになっている。
あんなに消えろと思っていたのに。
悲しみが風化した今では、なくならないで欲しいと思う。

部活を早退して寮に帰ると、アヤたんがいた。
「早いな。部活はどうした?」
「休んだ」
「……どうした。体調でも悪いのか」
「ううん。そうじゃなくて…」

何て言えばいいんだろうな。
去年は、何かの試験の前日で、勉強していた俺を置いてアヤたん達は墓参りに行ってしまった。
俺が君の家に着いた時には、墓参りから帰ってきた後だった。
今年は、俺も行きたい。
君に向き合わないと。
色んなものが風化していく中、この三人で俺が一番引きずっている。
俺も、折り合いをつけたい。

「ねぇ、アヤたん」
「何だ?」
「墓参り、行きたい」

去年は行けてないから。
俺、君の墓の場所知らないんだよね。

「…ヒュウガ」
「去年行ってないんだよ。行きたい」

アヤたんは俺の気持ちをよく分かってるから、それは驚いた顔をしていた。
好きな相手の墓参りなんて、普通行きたくないからね。

「何?」
「い、いや、すまない。余計な世話だったようだが…」
「?」
「行きたくないものだと思って、私とあいつだけで済ませてしまった…」
「えぇ!?誘うだけでもしてくれたらいいのに!!」
「すまない…」

珍しくアヤたんが本気で落ち込んでて、思わず吹き出した。
訳が分からないというように俺を見る。

「いいよ。じゃあ、明日も俺早く帰ってくるからさ。連れてってよ」
「ああ」
「何がいるかな?花とか買った方がいいよね」
「そうだなどうせなら  の好きそうなものにしてやれ」
「え?百合とかじゃなくていいの?墓参り用みたいなの売ってるじゃん」
「昨日私たちが持って行ったからいいだろう」

そっか。
うん、有難いかな。
百合が沢山あると、棺桶の中で百合に囲まれる君を思い出すから。





ピンク、オレンジ、黄色に白。
なんとも可愛らしい花束。
つい、買ってしまった。
帰る前に、顧問に部活を休む事伝えなきゃいけないのに。

「ふざけるな。二日続けて休める訳ないだろう」
「……え」
「お前はエースなんだ。他の部員まで個人の用事で休んで良いと思われたらどうする」
「俺、今日は…っ!!」

顧問の顔を見て分かった。
無理、だ。
何を言っても、休ませてはくれないだろう。
アヤたんに会いに行く時間だけ作ってもらった。
教室で俺を待っていてくれたアヤたんに、花を押し付けた。

「……俺、部活してくから」
「は?」
「これ代わりに渡しといて。俺からだ、って」
「待て、ヒュウガ!!」
「よろしく、アヤたん」
「ヒュウガ!!」





ごめん、  。
君に向き合うの、まだ出来そうにないんだ。

2年と数ヶ月。
アレで心を折られた俺は、結局まだ墓参りに行ってない。


"  また遊ぼう。  "


そんな手紙を書いて花束の中に紛れ込ませた。










・・・
事実を元にしたフィクション小説第3弾!!
今回は事実とフィクションが半々くらいです。
まぁ、正直小説用にだいぶ深い話になってますが、そんなに思い詰めてるのかと聞かれれば別にそうでもないです(え)
墓参り行けてない所為で、なんとなく引きずってるのはありますがw





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