「あ、雪」
窓を見れば、ちらちらと白いものが降っていた。
どうりで寒い訳だ。
俺は暖房の設定を一度上げた。

『あははっ。ホワイトクリスマスだーっ』
『クリスマスは一か月前だよー』
『あれ?』
『もうほんと馬鹿!!!ばーかばーか!!』
『ちょ、言わないでよ!!』
『でも実際馬鹿だよね。年いくつ?』
『あんたらと同い年ーっ!!』
『一緒にしないでくれるか』
『アヤたん学年一位だもんね』
『ヒュウガも三位じゃん』
『まぁね!!あれ、  は?』
『…っくぅ!!』
『ははっ!!』

「積もったら雪だるま作ろうか」
「そだね。  も雪だるま作るの好きだったし」
四人で集まった、三年前の今日の俺達の会話。
あの時は、一年後メンバーが減るなんて考えられなかったな。

『雪だるま作りたい!!』
『餓鬼か』
『いいじゃん楽しいじゃん!!』
『じゃ、誰が一番大きくて綺麗なの作れるか競争しよう!!』
『ははっ!!ヒュウガも  と同じくらいガキだよねっ』
『一緒にしないでよ!!』
『え、ヒュウガ酷くない?』

じわりと。
右手の甲が冷える。
二年前の、今日の、君の体温。
無機質な冷たさ。

「…………」

窓から、量を増した雪を見ながらそっと爪を立てた。
二人に見えないように。
消えろ、
消えてしまえ。
あんな冷たさ思い出したくない。
消えろ…!!

「ヒュウガ、窓側寒くないか?こっち寄れ」
「そうだよー?あ、私なんか温かいの作ってくるよ!!」

バレないようにしてたつもりだった。
でも、手の甲には自分でつけた爪の痕が残っていて。
二人は俺の軽い自傷行為の事を気付いてる。
「んー?大丈夫。雪見てたい」
変わらず爪を立てたまま答える。
だって、消えないんだ。
君の体温が、いつまでたっても消えないんだよ。
悲しみは風化するのに。
忘れたくないものは忘れて、忘れたいものが忘れられない。
何、これ?
「ヒュウガ」
「大丈夫だって。大丈夫」
アヤたんの声に苛立ちが混ざってた。
「…大丈夫だよ」
それは自分に言い聞かせてもいるようで。
はは。
だってさ、アヤたん。
今俺、  を呼んで『雪だるま作りに行こうか!!』なんて言いかけたんだよ。
本気で。

「ちょっとトイレ行ってくる」
アヤたんの視線に耐えられなくて、逃げるように部屋を出た。
トイレまでの歩く途中、君のルームメイトが珈琲を作ってるのが見えた。
カップを用意して、何かに気付いて、涙を流した。
…カップ、四つ用意してる。
そっか。
俺だけじゃないんだ?

「ごめん」

すぐアヤたんの所に戻って、謝った。
きっと、アヤたんも一緒なんだ。
皆、隠してるだけで、同じなんだ。
俺馬鹿だなぁ。
俺だけだと、思ってた。
「何を謝る?トイレに行ってきただけだろう?」
「……そうだね」
「珈琲だよー」
カップを『三つ』持ってきた君のルームメイトは、『いつもの笑み』を浮かべていた。
二人共、隠すの上手いなぁ…。
俺も。
「お、ありがとー」
「悪いな」
「ううん。いいって!!」
「あ"ー。あったけー生き返るー」
「ヒュウガ、おっさん臭い」
「えぇ!??」
俺も、二人に負けないように、さ。



じわり
手の甲に、冷たさが広がる
でも、やっぱりさ
この冷たさには勝てないんだ
自傷行為なのは分かってるけど、さ

そうだ
「ねぇ、二人共」
今年こそは、さ


「  の墓参り、行かない?」


いつまでも逃げないよ
君に向き合わないと、ね



・・・
事実を元にしたフィクション小説第2弾!
今回はほぼフィクションですw
軽い自傷行為を元にしたフィクションですww





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