捧げ物 | ナノ


▼ 02

「ヒュウガ少佐ぁぁああああ!!!!!!!!」
「またやってる……」

あたしは、扉の向こうから聞こえる彼氏の絶叫に苦笑する。
目の前に座るあたしの上司…アヤナミ様は、ため息をついた。

「あの馬鹿の所為でいつもコナツに迷惑をかけているな」
「そうですね…。コナツが倒れないか不安です」
「もし倒れたのならあの馬鹿を私がそれ以上の状態にするから安心しろ」

…アヤナミ様。
コナツを心配してくれてるのは嬉しいけれど、安心出来ないですそれ。

「やーんななしたんコナツが怖いー♪」

参謀室の扉を遠慮なく開け、ヒュウガ少佐が入って来てあたしに抱き付く。
咄嗟の事で反応出来ずに抱き締められてしまった。
あ……。

「少佐っ!!僕の彼女に抱きつかないで下さい何かが移ったらどうするんですか!!!!」
「コナツまで俺を病原菌扱い!??」
「離れて下さい!!!!」

べりっと音がするのでは、と思うほどの勢いでコナツがあたしから少佐を引き剥がした。
そのままコナツの腕の中に……。

「お願いですから触らないで下さい!!」
「いいじゃん抱き付くくらいー。女の子って柔らかくてあったかくて気持ちいいんだもん」
「だったらななし以外で!!」
「えー。ななしたんいい匂いするし」
「僕の彼女ですから!!」

コナツ。
アヤナミ様の御前ですよ?
お願い気付いて。
アヤナミ様の呆れた視線が恥ずかしい。

「まぁまぁ。コナツ、仕事中だよ?」
「……でも、」
「大丈夫。あたしにはコナツだけだよ?」

首を傾げながらそう言えば、渋々といったようにコナツは頷いた。
と思ったらどこから取り出したのか分からない紐で少佐を縛り上げた。
………早。

「少佐、逃げないで仕事して下さい」
「今日多いじゃん!!やだよ俺は任務に行きたい!!」
「……ヒュウガ」
「ん?何々アヤたん。もしかして任務入った??」
「仕事をコナツに手伝って貰わずに、一人で、今日中に、終わらせる事が出来たら連れて行ってやろう」
「やってきまーす!!」

嵐のようにやってきた少佐は、嵐のように出て行った。
コナツはアヤナミ様に何度も頭を下げて、あたしに小さく微笑んで、参謀室を出て行った。
暫くして、隣の執務室から皆の楽しげな会話が聞こえてきた。
もちろんコナツの声も混じっている。

「…執務室にいても良いのだぞ?」

アヤナミ様の、何度目かわからない気遣い。

「いいんです。あたしはアヤナミ様のベグライターですから」

噂と違って、アヤナミ様はとても優しい。
ただ不器用なだけだと思う。
コナツとは違う意味で、とても不器用。
でも、あたしはここで、アヤナミ様のベグライターとして働くと決めた。
コナツがヒュウガ少佐のベグライターとして働いているように。
正直、皆の輪に混ざりたいけど。










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