捧げ物 | ナノ


▼ 04

「先生に本当に彼女がいたなんて、皆びっくりしてるよ」
「生徒に教える気はなかったんだがな。公私混同したくなかったからな」
「えー?本当に?まんざらでもなそうだったよ?」
「お前までからかうのか…?」

例え先生に彼女がいても。
この時間をなくしたくない。
だから、今日も先生と夕日を眺める。
この時間だけは、先生は私を見ていてくれるから。
私だけを…。

「………」
「先生?どうしたの??」

不意に先生が黙って、どこかをじっと見つめた。
視線を追うと、どうやら校門のあたりを見ているみたい。
そこには、誰かを待つような女の人。
すごく美人。
あんな美人がいたんだ…。
誰かのお姉さんとか?

「あ、ヒュウガ」

ヒュウガがその女の人に声をかけて、そのまま二人は何かを話す。
楽しげに手をばたつかせるヒュウガは、こっちを指差した。
私達の方を。

「学校には来るなと言ったのに……」

ボソッと。
先生が呟いたのが聞こえた。
そうか、彼女か。

「へー。先生の彼女すごい美人だね」
「………」

私に見られた事か、ヒュウガと話している事か、拗ねたような表情をする先生。
あーもう、ほんと、勝てないや…。
初めから分かってた事だけど。

「ほらっ、先生会いに言ってきたら?ヒュウガ美人さん好きだから早くしないと口説かれちゃうよ?」
「…そうだな。お前も帰れ」
「もうちょっとだけ夕日見てから帰る。鍵は私がかけとくから大丈夫ですよーん」
「そうか。では頼んだ」
「はーい。先生さようなら」
「ああ、また明日」

ヒラヒラと手を振って、先生が教室を出て行くのを笑顔で見る。
私の前では、迷惑そうな顔していたのに。
扉についた窓から見えた先生の顔は嬉しそうで。
完全に姿が見えなくなった途端涙が溢れた。

「………っ」

ヒュウガに連絡しないと。
校門で先生の彼女と話しているヒュウガにメールを送る。
内容は、先に帰ってて、というもの。

暫くして、先生が校門に現れた。
彼女からヒュウガを引き剥がして、頭を叩いて早く帰れと催促してるのかな?
はは…っ。

「先生、お似合いだよ?」

幸せに、と唇だけ動かして泣いた。









とある女子高生のとある恋愛事情
(どうして気付かないのかな)
(こんなに好きなのに)









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