捧げ物 | ナノ


▼ 03

翌日化学の時間。

「なーなー。先生カノジョいるんだろ!?美人!??」

クラスの問題児、ミカゲが授業が始まったと同時にそんな事を言い出した。
露骨に体が強張るのが分かる。

「お前…。そんな事を言う暇があったら勉強しろ。このままだと赤点コースまっしぐらだぞ?」
「先生のカノジョの事が気になって勉強出来ねぇんだよ!!いいじゃんかよ教えてくれるくらいー!!」
「あのなぁ…」
「つーか、否定しないって事はカノジョいるんだよな!??」

珍しく先生が狼狽えている。
普段ならそんな姿を目に焼き付けて一日幸せでいられるけど……。

「それに俺ら、昨日先生が美人と歩いてるとこ見たし!!なぁテイト!」
「ん、あぁ…。俺は早く授業が受けたい。だから先生ミカゲを黙らせて下さい。さっさとカノジョいるって言えばいいんですよ」

て、テイト…。
テイトはこの話から逸らしてくれると思ってたのに!!

「む…」
「はーやーくーっ!!」

教室を軽く見渡してみると、他の人達も顔を輝かせて先生を見ていた。

「そ、そりゃあ彼女の一人や二人くらいいるが…」
「二人!??」
「ひ、一人だ…」
「やっぱ昨日の人!?なぁそうだろ!?」
「そうだろうな。昨日はまぁ、リ……アイツとしか二人きりにはなってないと思うしな」
「リ!?カノジョの名前!??」
「チッ…」

ちょっと、ミカゲ。
もうやめて。
お願いだからやめてよ。
先生の顔が、若干赤い。
そんな姿を見るのは初めてで。

「なんて言うんだよ、彼女!!なぁなぁ!!」
「よし、ミカゲ。お前はもう今回のテストで赤点取っても補習は受けなくていい」
「まじで!?やった!!」

「ああ。退学にしてやる」
「そっち!??」
「赤点取らなければいいんだろう?」
「そうだけど…!!」

「それか、私が特別に特訓してやろうか?ちなみにこれは貴様らの三年上の先輩、去年卒業した先輩の代まで行っていたのだがな」
「何だそれ!それ受けたら絶対赤点じゃないの!?俺やりた…」

「これを受けた生徒は次の日から七三分けの真面目な生徒に早変わりしたぞ。赤点どころがすべて90点代、化学にいたっては100点だからな。しかし、それから私の顔を見るとまるでトラウマでも思い出すように脂汗が出てきて顔を反らされる。何故だろうな」

「どんな酷い体罰したんだよ!!」
「今は体罰すると親がうるさいからな。親がうるさいと教委もうるさいからな…。だがお前は特別だ」

「何でだよ!!そんな酷ぇ事俺の親だって黙ってねぇよ!」
「いや?残念だが死ななけれ何をしてもいいと貴様の親から言われている」
「うわぁああああ!!」

「嫌だったら今回のテスト、頑張るんだな。お前らもシャキッとしろよ。今から教える所は授業ちゃんと聞かないと理解出来ないからな。ほら教科書開け」

先生の上手な誘導で、皆授業モード。
私は切り替えできずに、先生の言葉が延々とループする。





『私だって、彼女の一人や二人くらい…』
『昨日は、アイツとしか二人きりにはなってないと思うしな』





違うよ。
私だって、昨日先生と二人きりになった。
彼女……。
やっぱり先生と生徒なんて、少女漫画じゃないんだから無理…だよね。
夢見てた自分が馬鹿らしい。









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