捧げ物 | ナノ


▼ 02

「いや初めましてじゃないし!俺ななしの名前知ってるし!!っていうか何でいちいち俺んトコ相談しに来る訳!??」
「私の目の前でノリ悪く叫んだのは、昔馴染みの悪友、ヒュウガだ」

「何そのモノローグ的な台詞!!いや、悪友の所は否定しないけども!」
「高校生だというのに学校にサングラスをかけてくる変態だ」
「サングラスかける事が変態!?」

「今日も何語なのか分からない言葉を喚いている。早く地球語話せるようになるといいな」
「日本語ペラペラですから!!」

と、一通りヒュウガをからかい終えてから本題に入る。
誰より私を理解してくれて、すごく優しい、悪友に。

「噂、知ってる?」
「何の?」

分かっていたけど、聞き返してみる。
自分から肯定したくなかったから。
ヒュウガもそんな私の事を分かって、苦笑しながら話してくれる。

「お前の好きな人に、恋人がいるってウワサ」
「………聞いたよ」

誰もいない教室。
放課後の教室に、夕日が差し込んできた。
さっきまで雲に隠れていた夕日が、今までの鬱憤を晴らすかのように教室を一瞬でオレンジに染め上げる。

「まぁ、あの人ルックスはいいし何だかんだで優しいから、今までいなかったのが不思議だけどなー」
「ほんとにね」
「諦めたら?身分違いの恋なんて、叶わないのが定番だよ?」
「…身分違い、ね」

私の想い人。
アヤナミ先生。
私達の化学の先生で、地毛の銀髪、紫の目。
目は細くて鋭くて、何でも見透かしてしまいそうな瞳だけど、たまに凄く優しい色を灯す。
細い銀縁の眼鏡をかけていて、白衣を着ていかにも『化学の先生』。
背は高くて、私より頭いっこ分くらい違う。

「……ロミジュリ的な?」
「いやー、あれは幸せになれないだけで想いは通じ合ってたし…」

先生。
ふと顔を思い浮かべて、思わず顔が綻ぶ。

「わー、変態」
「どこがよ!!」
「そうやって、あの人の顔思い出してニヤついてんの」
「うっ……」

確かに、と自分でも思ってしまって何も言い返せなかった。

「そっ、そうだよ!!私は変態ですよーだ!」
「おまっ…否定しようよ」
「だって……」

時計を見ると、6時過ぎ。
そろそろ。

「はぁ…。じゃあ外で待ってるから」
「よろしく!」

先生は、必ずこの時間に教室に来て生徒が帰ったかどうか確認している。
その時に、窓から夕日を眺めるの。
その姿がすごく綺麗で。
私は先生がいつも立つ場所の隣くらいに立って、夕焼けに真っ赤に燃える街を見つめる。

「やっぱり残っていた」

大好きな低音の声。
大きい声を出した訳じゃないのにするりと耳に入ってくる、よく通る声。

「最近いつも残っているだろう」
「へへっ…。夕焼け、綺麗だから」

先生は私の隣に立って、同じように窓から目をやる。
ちら、と視線を横に流せば、先生の整った白い顔。
いつもかけている細い銀縁の眼鏡は、今は白衣の胸ポケットからつるだけ伸びている。
切れ長の目に収まる、アメジストの瞳。
珍しい銀髪の髪は、夕焼けと混ざってキラキラと輝いている。
写真を撮りたい。
この無防備な姿の先生を。

「またヒュウガを待たせているのか」
「帰ってていいって言ってるんですけどね…」
「あまり困らせるなよ。お前達、付き合っているんだろう?」

…………はい?
え、先生今なんて言った!??
私とヒュウガが付き合ってる!??
私は先生がこんなにも好きなのに…!!

「違いますよ。ただの悪友です。どこから聞いたんですか、その噂…」
「いや、噂もそうだが、登下校は一緒だしいつも二人で何か話しているし、さっきまでヒュウガと二人でいただろう?」
「確かにそうですけど…。悪友ですよ。それ以外なんでもありません」
「そうなのか。すまないな」
「いえ…」

許せないよー!!
だって、私は先生が…。

「ほら、そろそろ帰れ。親御さんが心配するだろう」
「はーい…」

こんな短い間でも。
私にとっては大切な時間。









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