▼ 03
少佐は、本気であの山を終わらせる気で頑張っているらしい。
どうしよう。
このままじゃ、本当にななしと少佐が…!!
「少佐、珈琲は…」
「いらない」
………少佐が珈琲をいらない!?
あれだけサボる為に僕に珈琲を要求していた少佐が!??
甘夏を食べ終えて、仕事を再開している僕ら。
怖いくらい仕事を真面目にする少佐。
さっきアヤナミ様が本当に少佐なのかどうか質問していたし。
「だってさぁー?コレ終わらしたらななしちゃんがちゅーさしてくれんだよー」
「……変態」
「これななしちゃん。君はそれをオッケーしたんだから俺の悪口言わない」
「変態変態変態ぃー」
「いいよ俺は変態で充分さっ!!がんばるぞーっ!!」
どうしよう。
どうしよう。
……あ、いや。
僕に、は、関係ない…し。
別に、ななしが誰とキスしようが、僕は……。
「コーナーツぅ?」
「!??」
「ぼーっとしてたよ?大丈夫?」
「え、あ、うん」
「やっぱり体調悪いんじゃない?」
ななしの手が額に触れて、僕の前髪をかき分ける。
「んー…熱はなさそうだけど」
額をくっつけて、僕の熱を計る。
いつも、こう。
僕にはなんの抵抗もなく触れてくる。
少佐に抱きつかれたり、手を繋がれたりするとすぐ顔赤くなるくせに。
僕だけだと思っていた。
僕だけが、いつまでもななしに触れていられると思っていた。
違うんだ。
僕は、ただのライバルで親友で同期で。
そう。
どれだけ話そうと、
毎年二人きりで甘夏を食べようと、
抵抗なく触れようと、
僕はななしのライバルで親友で同期なんだ。
どれだけ行こうとその延長でしかない。
「…………」
なんだ。
これ。
こんなモヤモヤした気持ち、今まで持った事ない。
ななしに対して、こんな、変な気持ち…。
「…少し、仮眠取ってきます」
「やっぱり体調悪いんじゃん!!顔色悪いし……大丈夫?部屋までついてこうか?」
「いや、大丈夫。寝不足で少し頭が痛いだけだから」
「…本当に大丈夫?」
「うん。少し寝たら戻ってくるから」
僕の両頬に伸びたななしの手を避けて、アヤナミ様に許可を取って執務室を出た。
「あぅー…。コナツに避けられたぁー…。アヤナミ様ぁ」
「いちいち私の所に来るな。それこそ勘違いされるぞ」
「私がアヤナミ様を?まさかありえませんよ!!」
「ヒュウガ」
「ぅっ…。だ、だって、コナツ目の下にまた隈出来てて…」
「だからといってキスの約束までしなくともいいだろう」
「キスくらい軽いもんです」
「ななしにとってはそうでも、そう考えない奴もいるぞ」
「…………でも、」
「ぐだぐだ言うなら私の所には来るな。もっと優しく接して欲しいのならカツラギの所へ行け」
「アヤナミ様は喝いれてくれますから」
「はぁ…」
.
prev / next