捧げ物 | ナノ


▼ 07

【ヒュウガside】

「ななし、ついてきているか?」

アヤたんが聞いて、振り返ったらななしちゃんはいなかった。

「……ななし?」
「アヤたんとカツラギさんは会議行ってて!!俺ななしちゃん探してくるよ!!」
「だが…っ!」
「大丈夫。俺が怖がられてるのは分かってるから」

アヤたんの肩を叩いて、元来た道を走り出した。





「ななしちゃん?ななしちゃーん!」

一通り来た道を探したけど、姿は見えなかった。
次は色々別の廊下を見ながら慎重に探す。
たまにそこにいた軍人に聞いたりしながら。
目撃情報はいくつかあったけど、その後どこに行ったのか分からない。

「ななしちゃーんっ!!」

駄目だ。
もしかして、俺だから?
俺の事を怖がっているのは知ってる。

「…にゃあ」
「ななしちゃん!??」

どこからか、小さく鳴き声が聞こえた気がした。
カツ、と靴の先に何かが当たる。

「ガラス玉…?」
「にゃう……」

しゃがんで拾い上げた。
と、真っ直ぐ前、廊下に置いてあった荷物の影にななしちゃんはいた。
うさぎのぬいぐるみを抱き締めて、今にも零れそうな程涙を貯めている。

「ななしちゃん。執務室に戻るから、ついておいで」
「にゃ…っ?」
「大丈夫。何もしないよ。執務室に行けば、コナツがいるから」
「……………」

立ち上がって執務室へ行く方向に向く。
振り返って確認したら、ななしちゃんが今にも泣き出しそうな顔で荷物の影から出てきていた。

「おいで。速かったら声かけてね」

ゆっくり、ななしちゃんが見失わないように歩く。
ななしちゃんは裸足だから、ぺたぺたとかわいい足音が聞こえるから、それでついて来てるか確認しながら。

「にゃぁ…」
「あ、速かった?」

振り返ったら、ななしちゃんが俯いて立ち止まっていた。

「大丈夫?もうすぐ執務室だよ。コナツに来てもらう?」
「にゃ…」

首を振るななしちゃん。
その拍子に涙が散った。

「どうしたの?」

あまり近づきすぎないように注意して、しゃがんで顔を覗き込む。

「…ななしちゃん?」
「ななし、みんないなくてこわかった…!!」

ばっと俺に抱きつくななしちゃん。
え、俺だけどいいの!??
あれだけ怖がってたのに…!

「ななし、ヒュウガきてくれてうれしかった…!!ひとりこわかったぁ……っ!!」

緊張の糸が一気にほどけたのか、大声で泣き出したななしちゃん。

「…大丈夫、もう大丈夫だよ」

抱き上げて、ゆっくり背中をさすりながら執務室に戻った。
扉を開けたらコナツ達がすごい驚いてたけど。

「ふぇっ…」
「大丈夫?」
「……にゃう」

軍服の袖で涙をぬぐってあげたら、お礼にと言わんばかりの笑顔で俺の頬をなめるななしちゃん。

「……よかった。俺だけいつまでたっても仲良くなれないのかと思ってた」
「にゃ…。だってヒュウガ、ずっとこわかった」
「そうかな…」
「にゃん」

膝にななしちゃんを乗っけて、座って色々話す。

「ところで、どうしてはぐれてたの?」
「にゃう…。ろおかにキラキラしてるのみつけて…コレひろったの」
「ガラス玉?」
「まえアヤがおなじのかってくれたの…。だから、アヤにみせようとおもって…」
「ああ…。ごめんね?気付けなくて」
「にゃん(ふるふる)」

俺の頬に自分の頬をすりつけるななしちゃん。
その頬は泣いた所為か熱を持って湿っていた。

「ヒュウガもすき。もうこわくない。ヒュウガもいいひと!」
「…そう言ってもらえると嬉しいよ」
「にゃんっ♪」

しばらくしてアヤたん達が戻ってきて、ななしちゃんを見て嬉しそうにしていた。
その後で、俺の膝に乗っているのを見て驚いていた。
今まで、俺には近づこうとしなかったのに。

「ななし、もう離れるな」
「にゃう」
「悪かった」
「にゃあっ!!」

俺の膝からアヤたんに飛びつく。
……あれ?
流石は猫…と言うべきなのかな?
普通、跳び上がる時は地面(今だったら俺の足)を蹴って跳ぶんだけど…。
まったく感触がなかった。
足を蹴って跳んでる感じがなかった。
すごいな…。

「大丈夫だったか?」
「こわかったけど、ヒュウガがきてくれたからだいじょおぶだった!!」
「そうか」
「にゃん!!」

そんなこんなで、やっとななしちゃんが俺達ブラックホークに完全に馴染んだ。










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