▼ 02
「…今私を変態だと思った奴は速やかに挙手しろ。早めに自分から言えば許してやらん事もないぞ」
『…………………;;;;;;;』
「…アヤ??」
「ななしが何か思う必要はない」
我らが参謀、アヤたんは自分の後ろに隠れるロリ猫耳娘の頭を撫でる。
それに、ななしと呼ばれた女の子は気持ちよさそうに目を細めた。
「…アヤたんその子誰??」
「ななしだ。見て分かる通り猫と人間の合成獣で…」
「いや見て分かる通りってナニさらっととんでもない事言ってんの!??合成獣って名前は聞いた事あるけど実際にいるもんなの!?」
「大声を出すなヒュウガ。ななしが怖がっているだろう」
ちっこい体をさらに小さく縮ませて、ななしちゃん(でいいのかな…?)は手にもったぬいぐるみを抱き締めてアヤたんの背中に隠れてしまった。
頭にちょこんと乗った耳はしゅんとうなだれている。
「いつから?」
「一か月程前から」
アヤたんがこんなカワイイ子を飼ってたなんて、びっくりだ。
奴隷とかなのかな??
「ななしがどうしても私の職場を見たいと言ってな。仕方なく連れてきたが…。極度の人見知りだ」
「そうなんだ。大丈夫だよーななしちゃん」
「………っ」
ぎゅっとアヤたんの軍服の袖を握る。
…かわいいな本当に。
腰のあたりから伸びた尻尾がぴんっと張っていて、モロ警戒されてる…。
「俺はヒュウガ。よろしくね」
笑いかけたら顔を隠されてしまった。
極度の人見知りって…。
これ違くね?
どっちかと言えば人間恐怖症っぽいけど。
「ヒュウガ貴様は近付くな」
「え!?」
「ななしが怖がっている。貴様は駄目だ」
「えーっ!!そんなぁ!!」
一通り全員が軽く自己紹介をしたけど、俺以外にはもう少し普通の反応。
え、俺ってそんなに怖い??
「私は仕事を始めるが…。ななしどうする?部屋に戻るか?」
「(フルフル)」
首を振って、アヤたんに抱きつくななしちゃん。
いや、本当にかわいいな。
「っていうかアヤたん。その子の詳しい説明ナシなの?」
「む…。そうだったな」
アヤたんはななしちゃんを抱き上げると、執務室に置いてある普段は使わない机に座った。
ななしちゃんを膝にのせて。
なんとなく流れで俺達もそれぞれの机に座る。
「一か月程前に、第一艦隊の連中と任務に行っていたのだが、覚えているか?」
「ああ、アレね。俺達全員置いてけぼりくらったやつ」
確か、第一艦隊のオッサン達が俺達がいなけりゃアヤたんを殺れるとかアホな事考えてたんだっけ?
結局失敗してたけど…。
「その時の任務が、とある貴族が人体合成をしているから潰すというものだった」
「人体合成…」
「ななしはその実験が成功したただ一人の合成獣だ。他のは全て失敗、死んだ」
「っ……」
眉をひそめたななしちゃんは、アヤたんの膝の上に乗ったまま、アヤたんに抱きついた。
嫌な事思い出させちゃったかな…。
「癒し系のザイフォンが使えて、私が部屋で預かっている」
「……にゃー」
アヤたんに頭を撫でられて、気持がよさそうに笑顔でくっつく。
猫…だな。
いや、猫との合成獣らしいけど。
「ななし」
「にゃ?」
「お前も、自分で名前くらい名乗れ。ここに来たいと言ったのはななしだぞ?」
「にゃ…」
アヤたんの膝の上で、くるりと体の向きを変えてこっちを見たななしちゃん。
その顔は緊張で強張っていて、
頬は赤く染まっていて、
瞳は限界まで潤んでいて、
猫耳はピンと立って、
尻尾は落ち着きなさそうに動いていて、
ぬいぐるみをぎゅっと抱き締めている。
なんていうか、かわいいの一言に尽きるね。
「ななし…です。アヤの、おへやで、くらしてます……。いやしけいの、ザイフォンがつかえて…にゃ……よろしくおねがいしまひゅっ」
最後噛んで真っ赤になってるのもいいね。
めっちゃかわいい。
すっげーかわいい。
何このかわいい生物。
いいのこんなかわいい子がいて!??
「にゃー…//」
恥ずかしさで真っ赤になって、アヤたんに再び抱きつくななしちゃん。
尻尾がぺしぺしとアヤたんの足を叩いている。
かわいい。
なんていうかかわいい。
でも、
「ななしちゃん?」
「……//」
誰とも一度も目を合わそうとしない。
こっちはすごく仲良くなりたいと思ってるのにっ!!!
やらしい意味じゃなく純粋に愛でる為に!!←
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