捧げ物 | ナノ


▼ 04

ヒュウガさんの隣に腰を下ろす。
風が柔らかく吹いて、私の髪も流される。

「…ねえ」
「…はい?」

ぽつりと、ヒュウガさんが私を呼んだ。

「何でか分からないけど、ななしを初めて見つけた時の事を思い出したよ」
「…私もですよ」
「奇遇だね」

ふふっ、と笑う。
どうしてだろう。
私にとって、あれはいい思い出だ。
だから、こういう綺麗な景色をみると思い出す。
綺麗な思い出を。

「俺達の復讐ってさ、何をしたら達成出来るんだろうね?」
「……さあ」

考えた事なかった。
だって、私にとって復讐なんてそれほど大事な事でもなかったから。
それより、この人の近くにいたかった。

「…俺、あの時ななしを俺と同じように見てたけど…もしかしたら違うのかもしれない」
「え?」

急に何を言い出すんだろう?
私が、あなたと違う?

「ななしの笑顔はいつでも本物で、楽しそうに笑う…。俺の憧れる綺麗な魂…」
「何言ってるんですか。そんなはずない。それを言うなら、あなただって、私と同じだと思いたくないくらい、かっこよくて、まっすぐで、憧れなんですから…」

違うだなんて言わないで欲しい。
私はどうすればいいの?
違うだなんて、仲間じゃないって言われたみたいで…。
突き放されたみたいじゃないか。

「…ななし?」
「私は、ヒュウガさんと、一緒って言われて、仲間って言われて、嬉しっ…嬉しかったのに…っ」

救われたのに。
あなたは私の笑顔が本物だと言った。
誰のおかげだと思ってるの?
あなたが傍にいたからに決まってるじゃん…。

「私じゃ、駄目ですか」

私じゃあなたに本物の笑顔で笑ってもらう事はできないの?

「私じゃ不満ですか。私じゃ役不足ですか?」

私はただあなたといたかっただけ。
一緒にいたかっただけなのに…。

「違うんだ。ごめん、ななし」

ゆっくりと、頭を撫でられる。

「嫉妬…かな。仲間だと思ってたななしがあまりにも楽しそうに毎日いるから…」
「それは、あなたがいるから…。私には、ヒュウガさんがいるから…っ」

どうして気付いてくれないんだろう。
どうして気付けなかったんだろう?

この人は私の孤独に気付いてくれたのに。
この人は私の孤独を埋めてくれたのに。

私はこの人の孤独に気付いていたのに。
どうして埋めれなかったんだろう?

「私、ここにいます。あなたと、一緒に」
「ななし…」
「私とあなたは一緒です」

孤独を抱えた人には、同じ孤独を抱えた人にしかわからない痛みがある。

「あなたの痛みは、私は痛いほどよくわかるから…」

あの日ヒュウガさんに言われた言葉。
そっくりそのまま、あなたに返します。

「一緒にいてください。私はあなたと一緒にいます」

風が吹いて、私達の頬を撫でた。
温かい陽の光が私達を照らす。
孤独だなんだと言っていたけれど。
私は、もう孤独ではないと思う。
同じ黒法術士の皆が、ブラックホークにいる。
なにより、ヒュウガさんがいる。

草も花も木も太陽も、
こんな綺麗な場所で昼寝をしようだなんて言えないくらい暗い場所にいた私が、
今ここでこうしていられるのは。
目の前の大切な、大好きなこの人のおかげ。

「私あなたと一緒にいます。だから…一緒にお昼寝、しましょうか」
「…そうだね」


お腹を抱えて笑った。
どちらも自然な笑顔で。
いつもの張り付けたような笑顔じゃなくて。

「えいっ」
「わっ!?/」

ヒュウガさんに抱きしめられて、そのまま柔らかい地面に寝転がる。
草の匂いが鼻をくすぐった。

「あの…?」
「一緒にいてくれるんでしょ?」

見上げたヒュウガさんは、満ち足りたような、幸せそうに、笑っていた。

「もちろんです」





絵画のような広場では、
一組の男女が眠っていた。
同じ孤独を抱えていて、
同じ境遇に立っていた二人。

彼らの距離が縮まるのは、
上司と部下から、
仲間や同士から、
別のものに変わるのは、
もう少し先の話。









ひなたぼっこ
(zzz)










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