黒木綿×桜 | ナノ


▼ 04

「連勝」
「……おー」
「今日バイト。行こ」
「どこだっけ?」
「サイゼリアン」
「おー」

8時。
少し早いけど、準備を色々してたら、きっとぴったり。

「遙、髪結んで」
「はいはい。ここ座って。動かないで」

ほら。
連勝のくせ毛をまとめて、ラウンジに行く。
今日の朝ご飯はベーグルサンドにフルーツヨーグルト。
連勝はカツ丼。
いや、ほんと好きだな。

「行こうか」
「おー」

メイドの小人村ちのや童辺あゆむに見送ってもらって妖館を出た。

「そういえば、お前御狐神サン?と知り合いなんだな」
「ああ、まぁね。小さい時にちょっとお世話になってて」
「ふーん」

コンビニに寄って、棒付きのキャンディを購入。
結構大量に。
ちなみに二人分。

「私グレープ」
「じゃあ俺コーラにしよ」

白い細い棒をくわえる。
手にコンビニに袋をぶら下げたままポケットに手を突っ込む。
ジャージ、色黒、刺青。

「……893だ」
「カタギです」
「見えない見えない」

怖い人だ。
関わっちゃいけない部類の人だ。
キャンディの棒がタバコに見える。

「お前のがよっぽど強いだろ」
「かよわい私にそんな期待しないで」
「いやー、少なくとも俺よりは」
「あんた喧嘩強いじゃん」
「……黒い布切れです」
「そりゃそうだけど。ってか自分で言いますか」

けらけらと笑いながら歩く。
町行く人々はちらちらとこっちを見てる。
893さんが見られてるよー。

「おはようございます」
「おはよう。今日は早いね」
「おはようございます」

バイトの先輩に挨拶して、自分のロッカーへ。
制服に着替えて、私は外、連勝は内。
さあ、頑張ろう。





その日の夜。
夕ご飯をラウンジで摂って大浴場、連勝の部屋といういつものコースで過ごした。
二人でベッドに座ってテレビを見ていた。

「遙ちゃーんっ!!メニアーック」
「わわっ。野ばら、どしたの」

扉が壊れんばかりの勢いで開いて、野ばらが弾丸のように飛び込んできた。
そのまま私は野ばらに抱き締められベッドに押し倒される。

「メニアックなのよ!!メニアック!!」
「う、うん。何が?」
「風呂上がりの遙ちゃんメニアック!!この髪が水分を含んでしっとりとしている所とか、まだ乾ききっていない潤んだ肌が吸い付いてくる所とか、何より石鹸の香り!!メニアック!!」
「あ、私の話ね…」
「ハァハァハァハァハァハァ」
「うん。息荒い。野ばらどいて」

なんとか野ばらの下から抜け出す。
あれ以上いたら何か色々と私は失っていただろう。

「聞いて遙ちゃん!!今日とてもメニアックな子に会ったのよ!!」
「凛々蝶?」
「ええ!!もう名前もメニアックよね!!」

やっぱり野ばらは凛々蝶を見てメニアックって言うと思った。

「黒髪パッツン色白ツリ目ちびっこで細いのにプニプニ黒タイツ着用…ヤバいわ!!」
「野ばら好きそうだもんね」
「ああでも遙ちゃんも好きよ!!」
「あ、ありがと…」
「凛々蝶ちゃんに、性的な意味で仲良くしましょと伝えたのよ」
「そ、そっか…」
「早く凛々蝶ちゃんとも遙ちゃんみたいな関係になりたいわ」
「待って!!性的な意味で仲良くしましょの後に私みたいな関係って何!?私達そんな関係なの!?」
「私の願望ね」
「……そっか」

野ばらがぎゅうーっと抱き付いてきて、逃れようともがいてたらバランスを崩して後ろに倒れた。
連勝に膝枕してもらう形で。

「……ちょっとアンタ、なんでここにいるのよ」
「おー。相変わらず俺にはとことん冷たいなー。ここ俺の部屋」
「連勝、ごめん」
「いいって。いつもの事だから」

連勝が膝枕してる私の髪をとかすように撫でる。
その手が気持ちよくて目を細める。

「遙ちゃんほんとメニアック!!その猫みたいな甘え方!!私にも!!私にもメニアックに甘えて!!」
「別に甘えてないけどっ」

なんとなく恥ずかしくて否定した。
いや、確かに甘えてるけど。
頭撫でられるの好きだし、連勝が私の髪をいじったり撫でたりするのも好き。

「あ、何か映画始まるぞ。これ遙が見たがってたやつじゃね?」
「ほんとだ!!皆で見よー?」
「おー」
「部屋は暗くしましょう!?」
「あ、それいい。映画館ぽい!」

野ばらが電気を消すと、部屋にはテレビの光だけになる。
連勝がずっと頭を撫でていてくれてるから、起き上がるのもなんだか嫌でそのまま。
連勝に膝枕をしてもらって映画を見る事にした。

「ああん!!遙ちゃん私が膝枕してあげるのに!!」
「身の危険を感じるから連勝にしてもらう」
「ははっ」

そんな事をしている間に映画が始まって、三人共黙って見始める。
ジェットコースターみたいにガンガン進む洋画。
目が離せなくなって、途中で野ばらが出ていったのも気付かなかった。
連勝は途中で寝ちゃって、私だけベッドに座って最後まで見た。

ただ。

(どうしよう…怖い……)

最後が何とも言えない恐怖を引きずる終わり方だった。
部屋に戻るのは怖い。
こんな時はいつも野ばらと一緒に寝てるけど、今から野ばらの部屋に行くのは怖い。
よし。
このまま連勝と寝よう。

連勝がくるまる布団をめくって潜り込む。
布団の中は程よく人肌に温まっていた。
丁度いい。
目を閉じると、眠りの淵はすぐそこにいた。










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