黒木綿×桜 | ナノ


▼ 03

朝。
自分でも驚く程ぱちっと目が覚めた。
よし。
こんな日は連勝を起こしに行こう。

「連勝。朝」
「……ん」
「連勝ぉ」
「…おー」
「朝。朝だよ」
「うん…。知ってる…」
「ご飯食べ行こ?」
「もう少し寝ようよ、遙ちゃん…」

一向に起きようとしない連勝を揺さぶる。
起きてー。
お腹空いてきた。
今日は朝ご飯何にしようかな。

「もー。先行ってるよ?」
「やだ…」
「早く」
「……ん」

連勝は起き上がると、寝ぼけ眼をごしごしとこする。
くぁ、と大きな欠伸をした連勝に、にっこり笑顔を向ける。

「おはよ」
「おー…。はよ、遙」





妖館にはラウンジがあって、私達は基本、いつもここで食事を取る。
私は、パンとサラダと目玉焼きにソーセージ。
今日は洋風。
連勝は、カツ丼。
朝からよくそんな重い物入るよね…。

「おー、凛々蝶じゃん。おはよう」
「ふん。反ノ塚か。君は朝からよく食べれるね。おはよう」
「遙、こいつ、凛々蝶」

小さい体に長い黒髪、前髪ぱっつん色白の女の子。
うん、やっぱり可愛い子だ。
……どこかで見たような気がする?

「千本木遙です。宜しく?」
「まぁ、一応宜しくと言っておこうか。白鬼院凛々蝶です。僕は君達とは仲良くするつもりはないけれど」
「おお、可愛い」
「だろ?」
「何なんだ君達は……」

凛々蝶の前に座って朝ご飯を食べる。
気付けば凛々蝶の隣に双熾がいた。
というか、主人を待つ犬のポジションにいた。

「ここのSSはこうも過剰なのか…?」
「凛々蝶さま、魚の骨をお取りします」
「いらん!!」

やっぱり双熾は凛々蝶のSSだったみたい。
そして双熾は冗談ではないようだ。
本当に魚の骨を取って身をほぐし始めた。
やりすぎ。

「断ったんじゃなかったのか?」
「僕は断った。おそらく家が勝手に契約手続きをしたんだろう…」

凛々蝶はちらりと双熾を見る。
双熾とはそれなりに付き合いが長い私でも見た事がない。
それはそれは幸せそうな笑顔だった。
耳としっぽが見える…。

「僕は一人になる為に家を出た。ここでなくては許可しないと言われたのでここにしただけの事。SSなどいらん世話だな。今からでも契約破棄してもらおう」
「では…」
「でも死ぬな!!」
「しかし凛々蝶さまのお世話をする為に存在する僕が他に何をして生きればいいのか…」
「昨日までの生活に戻ればいいのだ」
「もう忘れました…」

漫才みたいな二人の会話。
目の前で見ている分には楽しい。

「連勝。私も連勝がいない生活なんて戻れない…」
「俺もだよ遙ちゃん。遙がいなかったら俺はどうやって生きればいいんだろう…」
「君達。人をネタにするのは止めてもらおうか!」

だって、見てる分には楽しい。

「いいじゃんイケメンボディーガード」
「そうそう。えっと、ケビン・コスナー?」
「君達は適当すぎるな」

凛々蝶が本気で怒りそうだったのでそれ以上はやめておいた。

「どうぞ僕の事などご都合の悪い時は捨ておいて宜しい時だけでも使って頂ければ幸いです」
「本当に幸せか…?」
「勿論です。凛々蝶さまの事は以前から存じておりました。ずっとお会いしたいも思っておりました…」

…そうか。
やけに双熾が凛々蝶に執着してるのは…。

「僕を知ってた…?」
「フシギじゃないだろ。広くもないし密なやりとりもあるしな。俺達のコミュニティは」





「双熾」
「…遙」
「凛々蝶って、もしかして…」
「ええ。…黙っていて頂けますか?」
「双熾がそう言うなら。私からは何も言わない」
「ありがとうございます」










.

prev / next

[ bunki ]



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -