黒木綿×桜 | ナノ


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ここは通称『妖館』。
正式名はメゾン・ド・章樫。
一世帯につき一人のSSが付く最強のセキュリティを誇る最高級マンション。

ここは厳しい審査をクリアした選ばれた人間しか入れない。
その内容は高額な家賃を払う能力、家柄、経歴。
というのが表向きの条件。

表向き、というのが大事な所。
つまりは普通の人間がどれだけ大金や権力をたてに振ろうがここには住めないという事。

私、千本木遙はこの妖館の住人だ。
千本木家といえば大企業のひとつ。
飲食業を営んでいて、その業界の人間で名前を知らない者はいない、くらいの大企業。

勿論、私がこの妖館に住んでいるのはそんな事が理由じゃない。
千本木家の先祖……もう何代も前のおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんの……いくつか分かんないくらいのおじいちゃんの代。
その人が妖怪と交わって子供を作った。
血は薄れていくものだけど、たまに先祖返りが生まれる。
先祖返りっていうのはオリジナルの先祖の生まれ変わりみたいなもので、何代も繰り返している。
両親の要素はない。
その先祖返りが集まって暮らしているのが、妖館。

そう。
メゾン・ド・章樫の入館条件は先祖返りであること。

普通の先祖返りはそんなもので、私達千本木家はちょっと違う。

千年桜という妖怪が私のオリジナル。
でもこの千年桜は、植物の姿をして永遠に咲き誇る。
私が桜の姿をしているとかそんなんじゃなくて。
オリジナルの私達が初めに先祖と出会った話なんていうのは大抵どこの家も殆ど伝説と化していて、先祖返りの私達でさえ知らない事が多い。
という訳で、私は知らない。

なんやかんやあって、今人間の姿で先祖返りとして妖館で暮らしている。










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