▼ 01
日曜日。
今日は何もないので、ラウンジで朝食を取ってそのまま食後の珈琲。
隣には双熾と凛々蝶。
双熾はいつも通りの凛々蝶へのベタ褒め攻撃。
「君、それどころじゃないだろう今日は。勝負の内容は何だ?作戦は練ってあるのか」
「勝負と申しますと?」
眼鏡を押し上げきりっと『作戦』と書かれたノートを抱える凛々蝶に、にこにこと笑みを崩さない双熾。
「君…聞いてないのか…?」
「何なにー?勝負とかそういう話になってるの??」
「千本木さん…」
「そーたぁんvvはるたぁぁんvv」
「わっ!残夏!!」
面白そうだったので混ざろうと思って近付いたら、誰かに抱きしめられた。
というか、双熾ごと抱きしめられて、双熾との間に挟まれて死にそう。
く、苦しい…!!
「あぁんそーたんと一緒に働けるとは思わなかった〜声かけてくれれば良かったのに〜!!はるたんも久しぶり〜!あ、ちよたん昨夜ぶりーvv」
相変わらず口から先に生まれたような奴だな。
ペラペラとあっち喋ってこっち喋って。
「久しぶり、残夏」
「な…友人か…?」
「旧友だよvvねっvv」
「お久しぶりです。ご無沙汰しております、夏目さん」
「随分な温度差だな…」
夏目残夏。
百目の先祖返りで、右目には包帯が巻いてあり、前髪で隠してある。
何故かウサ耳。
「そーたんて相変わらずドライ…。でもボクそーたんになら抱かれてもいい…」
「ありがとうございます。光栄です」
「光栄なのか…」
あ、凛々蝶が引いてる。
ついでに野ばらがドン引きしていた。
「何アレ。男同士とかキモっ。ありえなくない?」
「まぁ…食指も人それぞれだからなぁ…」
「「………」」
私も凛々蝶も振り返らなかったけど。
野ばらさん。
あなたの手にあるのはグラビア誌だよね?
……まぁいいか。
「夏目さんは以前の主の友人で、親しくしていただいておりました。旧友と言って頂けたように古くからお付き合いさせて頂いております」
「幼なじみみたいなものか…」
「はるたんもね!」
「おい。敵と馴れ合うんじゃn「卍里ーっっっ!!!!」うわあああ!!」
双熾を指差して啖呵切ろうとした卍里に勢い良く抱きついた。
渡狸卍里。
髪を金髪に染めて、『悪そうな奴は大体友達』と書かれたTシャツを着ている。
自称・不良の根は真面目で優しい豆狸の先祖返り。
「久しぶり卍里ぃ」
「はっ離れろ!!今日こそケリつけてやんぜ狐ヤロー!!」
じたじた暴れるので、ぎゅぎゅっと抱きしめてから離れてあげた。
昔からかわいいなぁもう!!
「久しぶr…千本木が一回止めるからなんか恥ずかしくなったじゃねーか!!」
「やん卍里ごめんねちょーかわいいよしよしっ!!」
「止めろぉぉ!!くっ、首洗って待ってたか宿敵!!」
「お久しぶりです。ご無沙汰しております、渡狸さん」
「……」
凛々蝶がツッコミすらしなかった。
あーもう、かわいいなぁ卍里。
「彼も幼なじみーズの一員だよ」
「幼なじみなんかじゃねーよ!仲良しにすんなっ」
卍里が双熾につっかかるのは、私もちっちゃい時後ろから見てたんだけど、イジられてめそめそしてる時に何でも褒める双熾が『可愛かった』と言ったのが許せないらしい。
でも卍里って実際可愛いもんなぁ。
「ハイハーイ、ではルール説明です。勝負方法は妖館ウォークラリー。現在妖館に居る全ての住人従業員からサインをもらって早くここに戻ったチームの勝ち♪」
ほうほう。
面白そうだ、私が参加したい。
でも関係ないので連勝の隣に座って勝手に連勝の珈琲に口をつける。
「じゃああたしは勿論凛々蝶ちゃんの味方するーvvただしぃ、ニーソと太ももの間に指入れてもいい?」
「諦めてなかったのか…」「諦めてなかったんだ…」
私と連勝の台詞がかぶる。
凛々蝶が可愛いのは分かるけど、私は野ばらみたいにメニアック?な趣味はないし。
凛々蝶は極度の恥ずかしがりらしいし、野ばら、望みは薄いと思うけど?
「す…」
「え?」
「少しだけなら…すぐ済ませろ…」
彼女はスカートの端を持って少しめくった。
ぶはっという音と共に野ばらの鼻から鮮血が飛び散る。
連勝と顔を見合わせて、野ばらがダメだと悟ったので卍里たちに向き合う。
「お前らは細かすぎて伝わらないモノマネな」
「面白かったらサインしてあげるー」
「えー!!」
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