黒木綿×桜 | ナノ


▼ 02

「遙ーっ」
「わっ。久しぶり」
「久しぶりーっっ!!」

クラスには知り合いが結構いた。
私達のいつもつるんでる連中は男女とか関係ないので、混ざってじゃれ合う。

「ねー遙、帰り遊ぼー」
「あ、帰り野ばらが…」
「遊んで来いよ。野ばらには俺が言っとくから」
「ほんと?」
「やりぃー!!」
「俺もいい!?ダッツの約束!」

どこに行くか、何をするか、そんな話で盛り上がる中から抜けて連勝の所へ。

「連勝はいいの?」
「おー。気にすんな」
「でも」

連勝がいないならなぁ…。
ダッツは正直欲しいけど、でも。

「俺のバニラ、上手く買っといてくれよ」
「へ?」
「ダッツダッツ。俺も食いたい」
「…うん。分かった」

今日は初日なので、新しいクラスで集まって担任の話を軽く聞くだけ。
2時間にも満たないくらい。
私達が終わった時、凛々蝶やカルタ達1年生はまだ終わっていなかった。
私達は自己紹介なかったけど、1年生は必要だもんなぁ。

「じゃーな」
「うん」

連勝と別れて、奢らせに…げふん。
連勝と別れて、遊びに行く。
ゲーセンとかカラオケとか、色んな場所を巡って、夕方日が沈む前に帰ろうとする。

「あれ、双熾」
「…遙」

帰ろうとしたら、双熾がいた。
何か落ち込んでる?
凛々蝶もいないし…。
何かあった!?

「どうしたの!?凛々蝶は!?」
「……解雇されました」
「そっか解雇か……えぇ!??解雇ぉ!?」

凛々蝶が双熾を?
SS契約を破棄したって事?
何で?

「ちょ、何が…」
「遙…」
「わぁぁあああ!!大の男が道端で泣かないの!話聞いたげるし、力になれるなら仲直りに協力するからちょっと我慢して!」

仲直りに協力する、という言葉に反応して顔を上げる双熾。
耳も尻尾も垂れ下げて本気泣きしていたのに、今は少し元気になったみたいだ。
涙も引っ込めている。

「じゃあね、皆」
「彼氏かー」
「残念、彼氏じゃありませんー」
「じゃなんだー」
「兄みたいな」

クッキークリームとバニラ味のダッツが入った袋を下げて、双熾と妖館までの道を歩く。
双熾はその間に凛々蝶との喧嘩(?)を思い出しては泣きそうになりながらしょんぼりしていた。





「…という事がありまして」
「不浄、か…」
「本当の事です。僕はそれほどの事をして生きてきたのですから」
「双熾」

凛々蝶に言われるには、辛すぎる言葉。
双熾だけじゃない。
今までの双熾の生き方を少しでも知っている私にも、辛い。

「それで、契約を破棄すると…」
「そっか…」

双熾の頭を撫でる。
私がしてもらってたみたいに。

「凛々蝶さまを傷付けてしまいました。僕の軽率な行動で。もう死ぬしか…」
「は、早まらないで!!」

ぼろぼろと泣き始める双熾。
その口からは、凛々蝶さま、凛々蝶さま、と繰り返し漏れてくる。
双熾が泣いてるのは、自分の所為で傷付ついた凛々蝶を想って。
SSを解雇されて泣いてるんじゃない。
ねぇ、凛々蝶。
双熾はこんなに優しい人なんだよ?
確かに今までしてきた事だけを見れば綺麗ではないかもしれない。
でも、でも……。

「…どうして遙が泣きそうなんですか」
「だって…」

凛々蝶にも、絶対に双熾が必要だ。
双熾にも凛々蝶は必要。
不器用で人と関わるのが苦手な凛々蝶。
器用に人と関わっているように見えて、実はすごく苦手な双熾。
表面を見れば正反対の二人だけど、根っこの部分は似ているから。
二人共、独りになっても構わないと思いながら、どこかで人を望んでるから。

「仲直りしよう?双熾。凛々蝶と」
「ですが、凛々蝶さまはもう僕なんて見たくないでしょう」
「大丈夫。私も協力するから」
「遙」
「ね?」
「……はい!」










.

prev / next

[ bunki ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -