黒木綿×桜 | ナノ


▼ 03

カルタに手を引かれて厨房まで来た。

「おはよう、丈太郎」
「ふっ…。朝から俺の顔でも拝みに来たのかい…?」
「うん。今日は食欲ないからサンドイッチで。野菜のやつ」
「OK、任せな」
「よろしく」

いつも通りのコックの河住丈太郎。
軽くスルーしてカルタを見る。

「あ…」
「どうしたの?カルタ」
「はるちゃん…私、忘れてた…」
「ん?」
「朝ご飯にって、部屋にパン、置いてある…」
「分かった。いいよ、食べといで」
「うん…。ごめんね…はるちゃん」
「いいっていいって」

ぶんぶん手を振って、カルタは部屋に戻って行った。
サンドイッチを持ってラウンジに入ると凛々蝶がいた。
一人で。
珍しい。

「おはよう、凛々蝶」
「……千本木さんか。おはよう」

凛々蝶の隣に腰掛ける。
丈太郎は、私が食欲がないと言ったのに気を遣ってくれたのか小ぶりのサンドイッチを用意してくれた。
味のさっぱりした薄めのハムに、キャベツ、玉葱、トマトと、サウザンドレッシング。
私の好きなものばかり。
ありがとう、丈太郎。

「珍しいね、凛々蝶が一人って」
「む…。僕だってたまには一人にもなるさ」
「そっか。凛々蝶が良くても、双熾が死んじゃうんじゃないの?大丈夫?」
「ああ。彼に伝えた時間より早く起きてしまったから。急かすのも悪いと思ってな」
「……ふーん。双熾、凛々蝶が一人でご飯食べたなんて聞いた床に崩れ落ちるよ」
「大袈裟だろう。それより、千本木さんが反ノ塚といないのも珍しいじゃないか」
「そうかな」
「二人はセットだと雪小路さんから聞いた」
「野ばらめ…」

暫く凛々蝶と話していたら連勝が来た。
何故か一反木綿の姿で。

「おはよ〜っす。何、二人共朝飯そんだけ?少なくね?」
「はっ。気安く話しかけるなと言った事をもうお忘れかな?おはよう」

連勝の手にはカレーうどん。

「君こそ朝からカレーうどんとは…。どうでもいいが、こちらに汁を飛ばすなよ」
「大丈夫大丈夫。俺器用だから。……おっと」

さっそく飛ばした。
凛々蝶ではなく自分に、だけど。

「君は言った端から…」
「おー悪り悪り」

トントンと凛々蝶がカレーの染みを落とす為に布で叩く。
こういう時、一反木綿てどうなんだろう…。

「あれ。そーいやお前のSSは?」
「この後買い物の付き添いをしてもらう約束だ。引っ越して来たばかりで入り用のものもあるしな。ケータイとか」

サンドイッチを食べながら二人の会話を聞く。
買い物か。
そういえば、最近行ってないな。
今日は夜まで用事はないし。
行こうかな。

「ごちそうさま。先行ってるね」
「ああ」
「おー…。遙、後で部屋行っていい?」
「へ?」
「ちょっと野暮用」
「ん…。分かった」

皿を片付けて部屋に戻った。
連勝の野暮用って何だろう。
思い当たる節がありすぎて困る。
朝の事、かな…。

「んーっ!!」

目一杯伸びをしてベッドに倒れ込む。
霊殿。
その事を知ってるのは、悟ヶ原家、千本木家の人間と、双熾とあと二人。
今はいないけど、ここに住んでるはず。

「霊殿…かぁ」










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