▼ 05
「…ったく」
あいつら、結局人の誕生日言い訳にして自分が酒飲みてェだけじゃねェか。
「おめでとうございます」
すっかり静かになった屯所。
俺は自室の前の縁側に腰をおろしていた。
「…おォ」
その横に、ストンとななしが座った。
「…満月ですね」
「そうだな」
懐から煙草を取り出すと、くわえて火をつけた。
「…誕生日まで煙草ですか。一本吸うと五分寿命が縮むっていいますよ?」
「五分くらいどうって事ねェ」
「そのうち死にます」
ななしが黙ったので、そのまま沈黙がおりる。
俺は特に話したい事もないしな。
ただ、煙草をふかしながら、綺麗な満月を見上げていた。
それが、数分続いた。
「…土方さん」
「あ?」
「お誕生日、おめでとうございます」
「チッ…。そんなに何度も言わなくてもいいっつの」
「おめでたい事なんですから」
それからも、ななしはしつこくしつこく言い続けた。
「…お前ェ、実はなんか言いたい事でもあるんじゃねェのか??」
「っ!?Σ」
当たりか。
「早く言えよ」
そんな緊張する程の話なのか…??
「たっ、誕生日、おめでとうございます…っ!!」
「それは聞いた」
「その…ぷっ、プレゼントがありましてっ…//」
「マヨネーズじゃなくてか??」
「個人で用意しましたっ…////」
それは嬉しいが…。
なんでコイツ、こんなに顔真っ赤なんだ??
「…で?」
「へっ??」
「いや、だからくれるんじゃねェのかよ?」
「うぇ!?/は、はい…//」
…そんなに自分のプレゼントに自信ねェのか?
「何だよ。渡さねェなら期待させんなよ」
「期待…ですか!?//」
「あ?そ、そりゃァ、くれるっつったら楽しみにも…なるだろ/」
俺は何言ってんだ…。
今日おかしいな。
「あの…ですね。私…土方さんが…っ」
ドシャァァァアアアアア
「「っ!!??」」
急に大きな音が鳴って、腰にさした刀に手をあてて、いつでも抜刀できる体制になって音のなった方を向いた。
驚くななしを後ろに隠して鯉口を切る。
「いっててて……」
「おいっ!!てめェが後ろから押すから!!」
「お前が前を独占してるからだろッ!」
「そんな事言ったら一番邪魔なの局長ッスよ!!」
「なっ!お前らがぎゅうぎゅう押してくるのが悪いんだろっ!!」
倒れて山になった隊士達だった。
なんだ、こいつら寝たんじゃねェのか。
「ったく。何してやがんだ。全員でここに何か用でもあったか?」
「「「「「………え」」」」」
倒れたまま、不思議そうに見上げてくる隊士達の視線を無視して、再びななしに向きなおる。
「…で?ななし、さっき何言いかけたんだ?」
「〜〜〜〜〜っっっ!!!!!/////もういいですっ!!」
「あ!?」
真っ赤になって涙目になりながら走っていってしまった。
…何なんだよ。
「副長って意外と鈍感」
「モテるからじゃねェの?」
「くっ、くやしい!!」
こどものひ
(あっ、そういや)
(プレゼントもらってねェぞ)
end.
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