銀短編 | ナノ


▼ 03

しばらくして。
そろそろちまきと柏餅にも飽きてきた頃。

「皆さァーんっ!!ケーキですよォ!!」
「ウオオオオォォォォオオオオオ!!!!!!」

ケーキ…??
つ、ついにか??
そうだよな。
今までのはアレだ。
俺に気付かれないように…ってやつだったんだろ??
い、いや別に嬉しい訳じゃねェけどよ…。
待ってた訳じゃねェし…。

「っじゃーん!!!!」

ななしが、ケーキの入った箱のふたを開けた。
俺の目の前で。
…気付いてなかったふりしてやらねェと、こいつらがかわいそうだよな。
よ、よし。
ケーキの真ん中に置かれた板チョコには、大きく


『こどもの日』


と書かれていた。
……………。
周りにはこいのぼりや兜の形をした砂糖菓子。
え、本当にこどもの日の宴会なのか今日って??
まじで俺の誕生日忘れてやがんのかこいつら!?
どういう神経してやがんだっ。
俺が普段どんだけてめェらの世話してやってるか…!!
…いや、別に祝ってほしかった訳じゃないけどね!??

「じゃあ、はい、近藤さん」
「やったァ!!俺ね、こいのぼり欲しい!!」
「はいはい。どうぞ」
「わァい!!!!」
「あんたいい歳してそんなハシャぐなよ…」

とりあえず、誰もツッコまないのでやっておく。
俺誕生日なんだけどなァ……。

「はい次土方さん。土方さんにはこの兜あげます」
「いらねェよ」
「あげちゃいます」
「いらねェつってんだろ」
「あげるって言ってんだろ」
「………はい」

…え、こいつこんなキャラだったっけ。
まぁ…いいか。
全員にケーキがいきわたるのを待って、食べ始める。
俺はため息をひとつ吐いて、ケーキを口に運んだ。

「土方さん、土方さん」
「あ?なんだよ…??」
「ちゃんと兜食べて下さいね??」

……。
なんでやけに、俺に兜の砂糖菓子を食わせようとすんだ??
コレになんかある…とか?
まさか…。
いやいやいや。
誕生日プレゼント中に入れるとかどんだけベタなんだよ。
それはな。
流石にありえないな。

「ね??」
「…分かったよ」

だが…。
そ、それ以外にこんなに食わせようとするか?
普通。
砂糖菓子って意外と大きいしな…。
ま、まァ何でも入るんじゃねェの??
砂糖菓子を口に運ぶ。
その様子を、何故か他の隊士達も期待の目で見ていた。
お、おいおい。
まさか本当にこの中に…。

「ぐっ!!!???」
「「「「「よっしゃァ!!副長が引っかかったぞォォォ!!!!」」」」」

か、辛っ!!?
いや砂糖菓子なのに辛いってどういう事だ!!?
ツンと鼻にきて、じわりと涙が浮かんだ。
辛いっつかわさびか、コレ??

「案外チョロいもんですねィ。ひーじかァーたさん??」
「総吾…やっぱりてめェか」
「わーい!!土方さん引っかかったァー!!」
「あんな見え見えに食う事勧められちゃァ、絶対に食わないと思ってんですかねィ」

くっ…。
そうだ。
普通なら、何か仕込んでやがんじゃねェかとか勘ぐるはずだ。
いや…。
別に誕生日だからって浮かれてねェよ。

「何かあったんですかィ??」
「確かに…。今日なんか様子おかしいですよ??」
「………水飲んでくる」

立ち上がると、俺は広間を後にした。









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