▼ 01
「アヤたーん!!」
ブラックホーク執務室。
そこでは、今日もヒュウガ少佐がうるさくアヤナミ様に話し掛けていた。
仕事は、意外と進んでいた。
珍しく。
「何だ」
「今日何の日か知ってるー??」
「そうだな…。いや、実は貴様の命日にしてやろうと思っていた」
「そうだよ!!今日は七夕なんだよ!!」
「さっさと死ね」
ヒュウガ少佐とアヤナミ様は、基本的に会話が噛み合わない。
どっちも相手の事を考えずに喋るから。
キャッチボールじゃなくて、一方的に全力投球してる感じ。
アヤナミ様は少佐を殺すくらいな勢いで投げてるし。
「七夕だよ!!七夕っ!!」
「何がそんなに楽しいんだ」
「え…。アヤたん分かんないの!?」
ごめんなさい少佐。
私も分かりません。
「織り姫と彦星が一年に一回だけ会える日なんだよ!!」
「星は動かないがな」
「星じゃないよ織り姫と彦星」
まさか本気で信じているのか、とか思ってしまった私。
いやいやいや。
少佐ももう大人ですしね?
いくら色々と子供っぽい面があるからってそんな……。
「今日は皆で七夕やるよ!!」
……………。
七夕って『する』ものでしたっけ?
違いますよ、少佐。
今日は……。
「ねっ!アヤたん、俺ちゃんと仕事してるからいいよね!?」
「その為か…」
「いいでしょ!??」
「……仕事が終わってからの事に口出しするつもりはない」
「やったぁ!!」
…これ、少佐の為に私達も仕事早く終わらせないと駄目なパターンですよね。
はぁ……。
今日は仕事多い日なのに。
まあ、いいか。
"好きな人"の為なら。
その日の夜。
とある山の山頂にて。
「いやぁ、晴れてよかったね!!天の川見えてるよ!!」
「わぁ…。摩天楼の光がないと、こんなに星って見えるものなんですね」
「そうだよっ。だから、俺はあの摩天楼の光をどうにかして欲しいんだよね。月と星の明かりだけで充分明るいし!!」
「そうですね。明るいです」
呆れながらも、なんだかんだで皆楽しんで七夕の準備をしていた。
私は、少佐と笹を立てて、今は短冊作りをしている。
「ななしは何書くの?」
「えっと…」
少佐と両想いになれますように、とか…。
なんて少佐に言えないけど。
ていうか、ブラックホークって私以外男の人だからそんな事書いたら私だってすぐバレちゃう。
「あの、少佐…っ」
だったら、今言ってしまおう。
織り姫様、彦星様。
お願い。
今、私の願いを叶えて。
「誕生日、おめでとうございます…っ!!」
「ななし……」
「その、それで、私、ずっと少佐が好きでした……っ///」
言えた。
言えたよ、私。
「ななし」
へ、返事…だよね。
少佐がいつにもまして真剣な表情を……。
「気持ちは、嬉しいんだけどさ…」
ああ。
やっぱり。
私なんか、少佐には釣り合わない…。
「俺の誕生日明日だよ?」
……………。
「へ??」
「いやだから、俺の誕生日は7月8日」
………………………………。
モーレツに恥ずかしいです。
好きな人の誕生日を間違えました。
しかも誕生日のお祝いの勢いを借りて告白したと言うのに。
「そ、そんなぁ…。じゃあさっきのナシです!!なかった事にして下さい明日また言います!!///」
さっそく短冊に書いて笹に取り付ける。
織り姫様彦星様。
お願い今とても恥ずかしいです…!!
「俺の短冊もくくっといて」
「はい」
少佐から短冊を受け取って、紐で結び付け………はれ??
『少佐と両想いになれますように
ななし』
私の短冊。
私が今手に持ってる短冊、は…。
『ななしと両想いになれますように
ヒュウガ』
少佐……?
「何勝手に告白取り下げてるの?」
「ふぇ!??」
ふわっと何か温かいものに体を包まれて、少佐に後ろから抱き締められたと気付くのに数秒かかってしまった。
なっ、ななな何で…っ!!
「俺もななしが好きなのに?どうして明日まで待たなきゃいけないのさ??」
「へ??」
「…一回で聞きなよ。大事な話なんだからさ」
ううん。
聞こえてた。
聞こえてたけど…。
そ、空耳??
「俺もななしが好きだよ?」
一年に一度、織り姫と彦星が逢える日。
特別な日。
私にとっても特別な日になりました。
フライングバースデイ
(バースデーコールは)
(また明日言ってね?)
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