<オマケと書いて後日談と読む@>

「今日の予算会議はこれで終わり・・・。予算案を再検討した委員会はいないという事ですよね?」
「いんや?体育委員会の予算は見直す事になった。」
「え、何でですか?」
「・・・体育委員長代理には、今日一日ずっとあの双子の相手をしてもらったからな。」
「「・・・・・・・・・。」」
「体育委員会は二年連続で予算がマイナスだった訳で、流石に切羽詰ってたんだろうな。何でもするから予算くれって言われてさ。今日一日、会計室にいる双子の相手が出来たら再検討するって言ってやったのさ。マジでやり遂げるとは・・・」
「・・・・・・そう言えば、俺も委員長も予算会議でいなかったから・・・。」
「それでも我慢がならなくて、用具委員長と生物委員長代理を巻き込んでたけどな。アイツ等は・・・。――我が身を張って学園を守ってくれた体育委員長代理には、お望み通りの予算を差し上げても文句はないだろう。」

「(この二人に、ここまで言わせる五年生の双子って一体・・・・・・。)」


<オマケと書いて後日談と読むA>

 予算会議のあった日の夜。仙蔵の機嫌は誰の目から見ても分かる程に、悪かった。無理もない。会計委員会のからくりを見破ったと思った瞬間に、地に落とされ、責任問題として同輩に夕食まで奢らされてしまったのだから(流石に後輩たちは遠慮した)。
 布団越しにすらフツフツと滲み出ているかのような不機嫌オーラに、溜まらず文次郎は溜息混じりに声をかける。

「おーい、仙蔵ー。」
「――。」
「ほら、機嫌直せって。な?」
「貴様に分かるものか!私の気持ちなど・・・!」
「・・・そうだな。俺なんかがお前の気持ちを分かれる筈もないな。」
「・・・・・・・・・。」
「けど、本当に惜しかったな。林先輩、かなり焦ってたぞ?」
「焦っていた・・・?」
「あの先輩、他の事には無頓着だけどな。女装を見破られるとかなりショックを受けるんだよ。完璧主義者だからな。」

 敢えて話す事もないだろう、と思って黙っていた事だったが。林蔵は変装(主に女装)が見破られると、途端に反応してしまう。顔からどっと汗が出て、自慢の化粧を浮かせてしまうのだ。それでも、見慣れていなければ気付く事は出来ないだろうが。

「林子さん、って呼ばれた時点でかなりテンパってた。先輩を論破するには理想的だったと思うぞ。」
「・・・・・・文次郎。負けは負けだ。私は私の思い込みで負けたのだ。」
「おう。」
「私が未熟だった、それだけの事だ・・・!もうこんな無様な事にはしない・・・!卒業するまでに、あの先輩に口だけで勝てる話術を手に入れてやる・・・!」

 新たな目標を決めたらしい仙蔵。その様子に、文次郎は少しだけ顔が綻んだ。
 最近の仙蔵は、その有り余る才能故に目標を見失いがちだった。変装術という技術はともかく、林蔵の臨機応変な話術は経験からしか得られない。その気になれば容易く得られるだろうが、それでも仙蔵に新たな目標が出来たのは喜ばしい事だ。

「そっか。頑張れよ。応援代わりに、明日は休みだから一緒に団子屋行こうな。奢ってやるよ。」
「・・・うむ。」


<オマケと書いて後日談と読むB>

 予算会議から数日後。卒業間近で引き継ぎ準備中の作法委員会に衝撃が走った。

「あれー、委員長? 首実検に使う化粧道具って、こんなに古ぼけてましたっけー?」
「そりゃ可笑しいな、喜八郎。化粧道具は去年の予算で新品に・・・」
「委員長。何だか化粧の減りが早い気がするのですが・・・」
「何?化粧品もこの前仙蔵と買いに行ったばかり・・・って、あぁあああ!!?」


 一方その頃。同じく引き継ぎの準備中の会計委員会では。

「〜♪」
「・・・林先輩、何だかご機嫌ですね。」
「いやー、臨時収入があってな♪ 予算会議だったとは言え、委員会で使う部屋を放置するのはいけねぇよなぁ♪」
「・・・・・・首実検に使う化粧を個人で使う気ですか。」
「だからこそ、作法委員会はいい化粧品を買って来るんだよ。俺は化粧に妥協はしねぇが、首実検に使うからって差別もしねぇの。」
「(本当に手癖悪いんだなぁ、この人・・・。)・・・そう言えば、先輩。この前の予算会議って、角印がなくても先輩に拇印させれば通りましたよね?誰も言い出しませんでしたけど。」
「そーだな。だが、アイツ等は知ってんだ。俺の手を汚すとどうなるか・・・。」
「?」
「顔に次いで、手も変装では見られる所だからな。俺の手を故意に汚そうものなら、後輩全員にアイツ等の『恥ずかしい黒歴史』を尾鰭胸鰭付きまくった噂として暴露する事になってる。」
「(・・・この人の、時々感じるえげつなさって・・・徳先輩に似ちゃったのかもしれない。)」

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