「あ? もうお終いか?」

 刀を一降りして滴る血を振り落とし、文次郎はつまらなさそうに顔をしかめた。ピクリとも動かなくなった男の手を足で突き、そのまま踏み潰す。

「だから死体は好きじゃねえって」

 ボキッと骨が折れる音がした。それでも動かない男――の死体に鼻を鳴らし、手から足を退ける。死体の指はあらぬ方向に曲がっていた。

「つまらんな」

 文次郎は切るのが好きだ。ただ切るのでは無く、生きた人間を切るのが好きだ。もっと細かく言うのならば、好いている人間を切りたくて仕方ない。
 普通に好きな人間には刀を。普通よりも好きな人間には小刀を。大好きな人間には袋鎗を。好意度によりその時の道具は変わって来るが、文次郎は博愛主義を掲げているのでどんな人間でも喜んで切ることが出来る。

「仕方ねえ、他の奴見つけるか」

 然し、人間とは微弱なもので少し切っただけで死んでしまう生き物である。愛情表現に耐え切れなかった者を愛することを、文次郎はしない。
 愛するが故に殺戮を犯す少年は、激しい愛情表現を受け入れてくれる者を見つける為、闇夜に溶けていった。

――――

 「日向のち影」の文次郎です。
 設定だけでこんなにも素敵な絵を描いていただけました…!凄く幸せです、文次郎カッコイイ!表情が私のツボに入りまくりで、一気に妄想が広がりました。
 上の短文はその妄想です。JAM.様にメールで押し付けた物です。

 JAM.様、有り難うございました!

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