その日の夕食後、委員会活動の最中。
 お馴染みの会計室でパチパチと算盤を鳴らし、帳簿に目を光らせる己の後輩たちに、何の気なしに仁ノ助は問いかけてみた。

「潮江、文次郎ですか・・・?」
「珍しいっすね。委員長が後輩に興味を持つなんて。」

 下手すると、同輩にすら興味ないって態度するのに。と、ぼやくのは四年生の御園 林蔵だ。興味がないと公言した覚えはないのだが、彼らにはどう見られているのだろう。と、たまに不安になる。

「しかも、泣き虫で有名な一年生とは・・・」
「知っているのか?」
「有名っすよ?そこの双子とは、また違った意味で。」

 くい、と林蔵が指差すのは双子の三年生・蓬川 甲太と乙太。彼らは学園でもかなりの問題児で、特に生物・保健・図書の三つの委員会から危険視されているらしい。

「双子が迷惑振り撒く加害者として有名なら、潮江 文次郎は泣き虫という名の被害者で有名なんすよ。」
「被害者・・・?」
「所謂、苛めですよ。」

 他者の噂に大して興味を持たない仁ノ助が首を傾げると、それに答えるのは五年生の小田 徳ヱ門だった。彼は下級生時代に苛めに遭った経験があるそうなので、看過できないのだろう。

「今年の一年生は、才能溢れた生徒が多い事でも有名なんです。けど、それは彼らを一つ上の二年生は僻んだ目で見る事になります。でも、相手の方が利巧で下手に喧嘩も売れず。その結果、『才能がない』と言われる潮江 文次郎に矛先が向く訳です。」
「どうして、それが潮江 文次郎に向く。」
「特に才能のある五人と仲が良いらしいですよ。中でも、一年生にして天才の片鱗を見せる立花 仙蔵とは、同じ組で長屋も同室だそうで。」
「詳しいっすね。小田先輩。」
「・・・実は、彼が二年生の生徒たちに苛められている場面に遭遇しまして。こう、“お手玉”にしてやったんですが(私の忠告も三回無視されましたし)・・・・・・流石にやり過ぎだと、先生に言われた時に聞いたんです。」

 穏やかな口調と雰囲気とは対照的に、徳ヱ門は会計一番の武道派で、意外に手が出るのも早いのだ。

「そうか・・・。」
「で、委員長。彼がどうかしましたか?」

 徳ヱ門は興味心にそう問いかけたが、それ以上の答えは仁ノ助から帰って来る事はなく。彼らは仕方なしに委員会活動を再会させた。

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