<悪名高き委員会>※年齢操作(六年→一年)

 一年い組の潮江文次郎が、所属委員会を変えた。その異常さを知っていたのは、同輩の一年生たちではなく、その周りの他学年の生徒たちの方だ。
 委員会活動に慣れる為、基本的に一年生はどんな委員会でも昇級するまでは全うするのが慣例である。その委員会に余程の損失を与えない限りは、当人の希望があろうとなかろうと、委員会を変更する事が認められる事は殆どない。(過去に、三つもの委員会に多大な損失を負わせ、委員会を追放された双子の生徒の話は、今となっては語り草である。)

「文次郎の奴が入ってたのって、確か生物委員会だったよな?」
「何かヘマしたのか?」
「いや、そんな話は聞かないな。ある日突然、先生と文次郎から委員会が変わったとだけ。」
「へぇ。何の委員会になったんだい?」
「会計委員会。」
「「会計委員会ぃ?!」」

 不運になると有名な保健委員会を差し置いて、忍術学園不人気委員会の上位を占めている会計委員会。何でも仙蔵たちが入学する一年前から内情が一新され、今の委員長の気迫から、その通称は『地獄の会計委員会』。
 所属する委員会を決める際、どの学年の、どんな委員会の先輩からも「会計委員会だけは止めておけ」と異口同音に其々が念を押された程に、評判は宜しくない。

「何でそんな所に?!」
「さてな。だが、文次郎はその事で憂いている様子はなかったな。」
「けど、大丈夫かよ。今の会計委員長って、委員長代理になった時に他の会計委員を全員追い出したって聞いたぞ。」
「私も聞いたな!自分の息のかかった後輩だけを集めたとかって。」
「それいいの?!まるで独裁じゃないか!」

 彼らは知らない。それらの噂に、尾ひれ背びれが付いている事など。
 現会計委員長が、嘗ての会計委員を追い出したのは事実だが。己の息のかかった生徒を集めた事はない。現存する生徒たちは、皆己の意思で会計委員会に入ったのだから。

「・・・あれ、お前ら。そこで何してるんだ?」

 今日はバレーをしないのか?と訊ねて来るのは、今の彼らにとって渦中の人。潮江文次郎に他ならなかった。彼の方を振り向いた時、仙蔵たちは絶句してしまった。何せ、文次郎は水練でもしていたかのように、全身がずぶ濡れになっていたのだから。

「も、文次郎?!」
「ど、どうしたの?!そんなに濡れちゃって・・・!」
「ちょっとな。で、着替えと髪を拭きに長屋まで・・・」
「いやいや。着替えよりも先にお風呂だからね!風邪ひいちゃうよ!」

 保健委員として見逃せないのか、伊作が叫ぶ。が、文次郎は苦笑したままだ。

「池に落ちたくらいで風邪なんかひかないって。」
「池!?池に落ちたの?!だったら、尚の事、」
「早く戻らないと。まだ委員会が終わってないんだ。」
「ちょっと、文次郎?!」

 伊作の叱言から逃げるように走り去ってしまう文次郎。伊作は彼を追いかけて行ったが、恐らくは不運で追いつく事はないだろう。と、他の4人は何の気なしに思った。
 それよりも、気になるのが・・・。

「・・・委員会で、池に落ちた・・・?」
「会計委員会って、野外活動するのか?」
「・・・多分、違う。」
「何をどうすりゃ、あんな風になるんだよ・・・。」

 予想だに出来ない、会計委員会の内情。改めて、文次郎がこれまでにない異常な所に入ってしまったのだと思い知らされてしまう。
 会計委員会だけは止めておけ。と言っていた先輩たちの気持ちが、今更に分かった気がした。

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