<潮江が浜と会っていなかったらD>※IF、年齢操作なし、潮江の性格変更有り

 潮江文次郎について、話して欲しい。
 そう言われた八左ヱ門は、やはり他の後輩たちのように顔をしかめたものの。先輩たちが言う事なのだから、とそれに頷いてくれた。これが鉢屋三郎や尾浜勘右衛門だった場合は、こうはいかなかったかもしれない。

 曰く。八左ヱ門が生物委員会に入った時に、文次郎は二年の生物委員として既にそこにいた。毒虫を含む生き物の飼育の仕方から毒草を含む植物の扱い方まで、丁寧に教えてくれる良き先輩である事。但し、ある一点においては異常な程にネガティブになってしまうらしい。

「・・・その、ある一点が我々だと?」
「正確には、委員長になってる他の六年生に対して、ですね。委員会に入っていない六年生には至って普通に接してましたから。」

 実技も座学も平凡な自分が、彼らと肩を並べる委員長席にいるのは可笑しいから始まり。終いには今からでも学園を止めようと言い出す事が日常となっているらしい。その為、生物委員の面々は文次郎の前ではなるべく他の六年生の話題を上げないようにしているのだとか。
 彼の態度は嫌悪、というよりも苦手で逃げ回っていようだる。顔を合わせる事も拒絶して、生物委員会の先輩が全員卒業してしまってからは生物小屋に寝泊まりするようになり、今となっては六年長屋にいる事の方が珍しいのだという。気配を感じ取ろうものなら、作業を中断してまで姿を消してしまうのだから困りものだ。と、最後は愚痴になっている。


 そこまで徹底して拒絶されているとは予想だにしていなかったので、八左ヱ門の話を又聞きした他の三人も絶句してしまった。

「んな滅茶苦茶な、そいつ本当に潮江文次郎かよ!」
「気持ちは分かるけどさ、パッと身の印象は違ったけど確かに文次郎だったんだよ。」
「同姓同名というだけで別人が入れ替われる程、忍術学園は甘くないだろう?」
「でも!それって全然文次郎っぽくないいじゃん!」

 小平太の言葉には、誰もが同意した。
 彼らの知る文次郎らしさ、とは。例えば強い意思の目であったり、ギンギンに忍者していたり、頭に苦無を指して鍛錬していたり、冷たい物を好んで食していたり、鉄粉お握りを作っていたり、帳簿が合わないと連日徹夜して隈が出来ていたり。

「・・・・・・。」
「・・・・・・思い返すと、何か最初以外は別になくてもいいかな?」
「こうして見ると、ハチャメチャな奴だったな!」
「小平太に言われると、アレだな。」
「・・・だが、ここまで私たちの認識と違うのは奇妙だ。」

 自分たちと、他の生徒や教師陣。彼らの認識が違うというだけではない。
 文次郎の根本的な何かが変わってしまっているのだ。

「今の文次郎と、私たちの記憶にある文次郎の、違い・・・。」
「あり過ぎてピンと来ないな!」
「正直、別人と言われたら信じてしまいそうだしね・・・。」
「委員会・・・。」
「・・・どうした、仙蔵。」
「文次郎が・・・生物委員会にずっといた・・・。」

 とある可能性に突き当たったらしい、仙蔵がポツリと呟いた。

「つまり、今の文次郎は『一年生の途中で会計委員会に行かなかった文次郎』なのか・・・?」

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