<潮江が浜と会っていなかったらA>※IF、年齢操作なし、潮江の性格変更有り

「あーあ。文次郎も、もっと予算くれたらいーのになぁ!」
 そうしたら、もっとバレーボールが買えたのに。――小平太は、そんな何気ない気持ちで呟いたつもりだった。けれど、その言葉を聞き逃さなかったのは彼が委員長を勤める体育委員会の後輩たちだ。

「え、七松先輩。付かぬ事をお訊きしますが・・・、どうして潮江先輩なのですか?」
「へ?どうしてって、文次郎は会計委員会の委員長だろ?」
 これも、何気ない答えのつもりだった。けれど、ポカンとした後輩たちは呆けたままに告げる。

「いやいやいや!どうしちゃったんですか、七松先輩!」
「ん?何か変な事言ったか?」
「変な事っていうか、潮江先輩は『生物委員会』の委員長でしょう?」
「そうですよ。『会計委員会』じゃないですよ。」
「え?」

 文次郎が『生物委員会』の委員長?
 『会計委員会』ではない?

「会計委員会の代表は、四年の田村 三木ヱ門ですよ。あぁ、同じ年齢のくせして私よりも先に委員長代理となるとは・・・!・・・・・・ぁあ、すいません!七松先輩が不服という訳ではありません!本当です!」
「大変っすよねぇ。六年も五年もいないのに会計委員会を切り盛りするのって。」

 それからの後輩たちの会話は、何一つとして小平太の頭の中に入って来なかった。只、己の中にある大切な何かを失ってしまったかのような虚無感が、ポカリと穴となって存在している。

 後輩たちに委員会活動の解散を告げ、小平太は走り出す。何故か、小平太の足は“そこ”へ向かった。

「仙蔵!仙蔵!――立花仙蔵ーっ!文次郎って、生物委員会の委員長になったのか?!」

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