<会計委員会>※年齢操作(六年→一年)

 バッシャーン!と、池に水飛沫が立つ。

 今日も今日とて、『地獄の会計委員会』を束ねる浜 仁ノ助の指導は厳しい。今まさに、ウトウトとしてしまった一年い組の潮江 文次郎が近場の池に放り込まれていた。擁護しようにも、「居眠りするとは弛んでいる」と言い切られるだけで、会計委員は見守る事しか出来ないのだ。

「(躾と言えども・・・、流石にこれは・・・)」
「(あーあー。まぁた、池に放り込まれて・・・。)」
「「(なっちゃん可哀想ー。)」」

 生真面目な性格の文次郎だが、何故か仁ノ助の傍にいる時に限って船を漕いでしまう。仁ノ助が任務などで不在の時に、他の会計委員は文次郎が居眠りしている事など滅多にないのだ。(告げたら恐ろしい事になりそうなので、彼らはその事を仁ノ助には告げていない)

 安心なのか、油断なのか。いずれにしても、仁ノ助の傍で委員会活動をする文次郎は最低でも一度はこうして池に放り込まれている。
 ぶくぶく、と池の気泡が沸き立つ。程なく目覚めた文次郎が顔を出して、「何度言えば分かる」から始まる仁ノ助の説教が始まる事だろう。説教が終われば、今度は会計委員全員を連れて鍛錬に入るのは、最早お決まりとなっている。

 だが、今回は違った。

「・・・・・・。」
 ぶくぶく、
「「・・・・・・・・・。」」
 ぶくぶくぶく、
「・・・・・・。」

 いつまで経っても、池から顔を出そうとしない文次郎。目が覚めれば呼吸をしようと池から顔を出す筈だ。それをしない、という事は・・・つまり・・・・・・。

「お、溺れてるー!?」
「!」
「委員長!」

 咄嗟に動いたのは仁ノ助だった。上級生にしてみれば大した深さのない池だが、下級生にとっては溺れる事があっても可笑しくはない深さ。
 本日の小田 徳ヱ門の得意武器、縄凪の縄をその手に池へと飛び込む。大した時間も掛からずに池から上がった仁ノ助の腕に収まる文次郎。しかし・・・

「・・・zzz」
「寝てるー?!」

 池に放り込まれて尚且つ眠り続ける文次郎に、会計委員の面々は呆然とするしかなかった。

 後日、文次郎にその事を問いただすと、彼は赤面ながらに頭を下げる。

「すみません、仁先輩!どうも水の中って落ち着いちゃって、ついつい寝てしまうんです!」
「文次郎。委員会活動中に寝るとは会計委員としての配慮が足りん。」
「はい、精進します!」

「・・・池に放り込まれて普通に寝られる奴なんて始めて見た。」

 最後の御園 林蔵の呟きには、他の面々の完全なる頷きが付いてきた。

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